2年で250店舗と驚愕の出店数~安い、うまい!「鰻の成瀬」
〇躍進の秘密3~初心者への親身なサポート 創業以来、加盟の希望者が絶えない「鰻の成瀬」。その多くがFCビジネスの初心者だ。 山本が最終面談をしていたのは、最近脱サラし、「鰻の成瀬」で勝負したいという56歳の男性。「去年の7月に双子が生まれて、残り少ない会社員の収入では心許ないので、FCオーナーとなって稼ぎたい」と言う。 それに対して山本は「(地方に)引っ越せるんだったら引っ越したほうがいい。『鰻の成瀬』は一都三県はどこにでもある。(地方は)物件の初期費用は安いし、固定費も人件費も安い。単価は一緒なので利益は出やすい」と提案した。 「飲食は初めてで経営もやったことはない」という男性に「あせらないことが大事。バタバタしても仕方がないので常に数カ月先を見て動いていく」とアドバイスした。 面談中の山本は、売り上げ目標や細かいルールなどは、一切口にしない。ただ、加盟するオーナーが、不安なくスタートできるよう寄り添っているのだ。 「FC本部だけが儲かって、加盟店が苦労するのは望む形ではない。加盟した人が幸せになってもらうのが大前提です」(山本) さらにパートやバイトにも気を配る。昼と夜の間で一度店を閉めているが、子育て中のパートスタッフは「(幼稚園に迎えにいくまでの)空き時間で、ランチタイムだけ働いている。都合もいいし時間もいい」と言う。 「子育て世代の母親は働ける環境が少ない。そういう人材を雇用していけば優秀な人材を確保できると思います」(山本)
愛知の人気ブランドを使った国産うなぎを新メニューに
8月から「鰻の成瀬」は新たな試みに乗り出した。従来の外国産とは別に、国産うなぎも全店舗のメニューに取り入れることにしたのだ(特上「松」4400円、「竹」4000円、「梅」3400円)。 「『鰻の成瀬』で国産を食べてみたいという声は、創業以来たくさんもらっていたので、1回入れてみて、お客様に選択肢を与えてみようかと」(山本) 日本有数のうなぎの産地、愛知・西尾市。「三河淡水魚」は全国トップクラスの取り扱い量を誇る養殖の会社だ。売りはその養殖技術にある。 「明治37年からこの地で養殖をやっていますから、100年以上、技術がどんどん継承されています」(柴崎忠義社長) うなぎの養殖は通常、全面コンクリートの池で行われるが、ここでは自然の環境に近づけるために山土や砂利を敷き詰め、水は地元・矢作川の清流水をパイプラインで引き込んでいる。良質の脂ののったうなぎは、地域ブランド「一色産うなぎ」として全国の老舗店などで人気を博している。 この会社を紹介された山本は、7月に訪れて、柴崎社長に取り引きを打診した。 「『鰻の成瀬』にはうなぎ業界の中で賛否両論があるんです。どちらかといえば否のほうが多い。正直、最初はあまり付き合いたくないと思った。『あなたはうなぎの何を知っている?』と聞いたところ、山本社長は正直に『私はうなぎのことは何も知りません』とおっしゃる。『ちょっと待ってくれ。じゃあなんでうなぎのFC店で安売り店なんだ?』と聞くと『既存のFCチェーンでは生活できない方がいる。私は生活できない人が生計を立てられるようにしたい』と。なるほどと共感するところがありました。面白い人だと思った」(柴崎さん) 社長のハートをつかんだ山本はこうして国産うなぎの入手にこぎつけた。