「心の病」につながるネガティブな想像力をかきたてる、現代人を蝕む4つのストレスとは
日常生活におけるストレスの蓄積が「心の病」を引き起こすことはよく知られていますが、ではいったい、現代社会ではなぜそうした「心の病」が増えているのでしょうか。また、どのようなストレスが原因となっているのでしょうか。これまで1万人を診察してきた経験をもとに、現代人に特有なストレスと、それによって引き起こされる「心の病」のメカニズムについて、広岡氏が解説します。 *本稿は広岡氏の著書『心の病になった人とその家族が最初に読む本』から一部を抜粋・編集してお届けします。 【図で見る】現代人の不安心を増大させる4つのストレス源
■他者への「想像力」が不安心を増大させる 他の動物と比べると体が小さく、力も強くない人類が、不条理な生物界の中で生き残ってきたのは、著しく脳が進化し、知覚領域を超える思考力を身につけたからです。 それを、私たちは想像力と呼んでいます。想像力を獲得したことで、未来のことを考えられるようになり、相手のことを考えられるようになり、生存競争を勝ち抜くための戦略が一気に進化します。 相手の動きを読んでわなを仕掛けたり、手に入る材料で武器をつくったり、戦況を分析して守ったり、攻めたり……。想像力を駆使することで、ただ相手を力でねじ伏せればいいと考える他の動物たちの脅威に打ち勝ってきたのです。
人類が進化の過程で獲得した、この想像力が、実は、心の病をつくる大きな要因にもなりました。というのは、生存競争に勝ち残るための想像力を、敵である他の動物だけでなく、協力して戦ってきた仲間にも働かせるようになったからです。 想像がポジティブなものなら、愛情が深まり、連帯感が強くなり、信頼感が増します。逆にネガティブなものなら、猜疑心が生まれたり、不信感が芽生えたりします。ちょっとした相手に対する怒りが、恨みや憎しみに変わることもあります。
ポジティブな想像力から生まれたのが、共同体を維持するために考えられた、倫理や道徳です。共同体をもっと良くしたい、強くしたいという想いが、ポジティブな想像力を働かせたのです。生存競争に勝ち残るためにつくられた小さな集団(共同体)は、みんなで守る倫理や道徳があることで、より強く、大きくなっていきます。 小さなグループから大きなグループへ、そして国へと発展していきます。「信じる」というポジティブな心(信仰)を拠り所とする共同体である宗教も、そのひとつと考えられます。