「心の病」につながるネガティブな想像力をかきたてる、現代人を蝕む4つのストレスとは
誰かと比べて自分は劣っていると感じる経験は、誰にでもあると思います。それが何度もくり返されることでつくられるのが病の種です。劣等心の種があると、うつ病を発症することがあります。どういった種が生まれるかは、環境や体質、経験などによって人それぞれ異なり、その違いが症状の違いとして現れます。 しくみは同じでも、ある人はうつ病、ある人は統合失調症、ある人はパニック障害などと発症する心の病が異なるのは、不安心につくられる種の違いにあるのです。
ストレスがまったくない人がいないように、心の病の種をひとつも持っていない人もいません。いろいろな種がありますが、誰もが何かしらの種を持っています。 昔は、心の病は特定の人だけが発症する病で忌み嫌われるところがありました。家族が発症すると、その事実を知られないように隠すことさえあったほどです。 しかし、心の病の種を持つ私たちは、誰でも発症する可能性があります。 統合失調症の種となるのは、職場や学校などの集団社会の中で存在を脅かされる経験を重ねることで生まれる「被害心」や「脅威心」です。
■「発症するか、しないか」の違いでしかない みなさんには、誰かの言動に傷ついたり、裏切られたり、結果が出なくてビクビクしたりした経験はありませんか。そういう経験が多い人は、心の病を発症していなくても、不安心の中に、統合失調症の種があるということです。 持っている種は、ひとつの心の病だけとは限りません。うつ病の種も、統合失調症の種も、パニック障害の種も、併せ持つ人はいます。 私の患者さんの場合でも、複数の心の病を発症することはよくあります。パニック障害の患者さんにうつ病の症状があったり、逆に、うつ病の患者さんにパニック発作が起きたり……。
どうして複数の心の病が併存するのかというと、発症のしくみはどの心の病も同じだからです。 病の種を複数持っている人は、その種のどれかが症状として現れると、他の種の症状が現れるリスクもあるということです。 心の病の種は、多かれ少なかれ誰にでもあります。心の病に悩まされる人とそうでない人がいるのは、発症するか、しないかの違いだけなのです。
広岡 清伸 :精神科医