“毒親”がこんなに!? 今春の注目作から考える。子どもはいかに育つのか、いかに感性や存在を殺されるのか
毒親に負けるな! 衝撃の感動作が続々公開
実のところ私自身も褒められるような親ではないので、決して偉そうなことは言えないのですが……。なぜか今春、衝撃的な“毒親”が登場する映画が続いており、しかもその多くが良品だったりするので、思わず「うぉぉぉぉ~」と仰け反っております。 痛そうな表情の子ども、あるいは無表情を貼り付けた子どもたちを見ると、何だかもう我慢できないくらいに胸が締め付けられてしまって……。 例えば、上は『システム・クラッシャー』の1シーンですが、とっても深い愛情で結ばれた母と娘に見えますよね!? 娘がママのことを大好きなのは当然ですが、ママの方も間違いなく娘を愛してはいるんです。愛してはいるのだけれど、情緒不安定な娘を持て余し、そこから逃げ出してしまうーー。 公開中の『52ヘルツのクジラたち』に始まり、6月公開の『あんのこと』まで、色んな形の親子が登場する6作品。観始めたら最後、“一体、この子たちはどうなるの!?”と目が離せません! 子どもたちがどんな風にトラウマから抜け出すことが出来るのか、あるいは抜け出そうと頑張ったのか、または彼らに手を差し伸べ、愛情を注いだ存在との関係性など、作品ごとに探ってみたいと思います。
心震える感動作『52ヘルツのクジラたち』
LEE本誌4月号でも紹介した作品ですが、主演は『市子』でも壮絶な環境で育った女性を全身全霊で演じ切った杉咲花さん。本作でも、またまた「さすが杉咲さん!」と言わずにいられない、繊細な表現で魅せてくれます。
Story & Introduction 東京から海辺の街の一軒家へと、一人で引っ越して来た貴瑚(きこ)は、虐待されて声が出なくなった「ムシ」と呼ばれる少年と出会います。少年をどうにか助けたいと奔走する貴瑚にも、実は長く母親から虐待されてきたという過去があり……。21年、本屋大賞を受賞した町田その子の同名ベストセラー小説を、『八日目の蝉』の成島出監督が映画化。 物語は、貴瑚が少年と出会う現在と、貴瑚の過去に何があったのかという現在と過去が静かに、けれどスリリングに絡み合って展開します。そう、本作には少年と貴瑚、2人の毒親が登場します。 少年の母はアイドルを目指すものの、望まぬ妊娠・出産をして町へ舞い戻って来たヤンママ。“ちやほやされたい”空気を全身に充満させた彼女にとって、子どもは成功を阻止した邪魔者以外の何ものでもないようです。だから完全に育児放棄&ネグレクト。いつしか少年は話すことを止めてしまった、諦めてしまったーーのでした。 ちなみに母を演じるのは、今をときめく西野七瀬さん。バイト先の男性客にベタベタ媚びながら、息子を見ると豹変して目を吊り上げる、その演技はお見事です! まだ若いからもあるでしょうが、とにかく“私を見て!私を褒めて!”と承認欲求を強く求める姿からは、彼女自身が愛に満たされない子ども時代を送って来たのだろうな…と思わされます。