中国企業ロゴ混入で「中国のスパイ」扱いされた自然エネルギー財団の大林ミカ事務局長に聞いた
国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画(第7次)」の議論が始まった。経済産業省は5月15日、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長・隅修三東京海上日動火災保険相談役、委員15人)を開き、議論をスタートさせた。 現在のエネルギー基本計画(第6次)は、菅義偉前首相の「2050年カーボンニュートラル宣言」に呼応し、2030年度の電源構成に占める脱炭素電源比率を約6割と想定している。内訳は「再生可能エネルギー36~38%、原子力20~22%、水素・アンモニア1%」。 【写真】インタビューに応える自然エネルギー財団事務局長の大林ミカ氏
今回の見直しでは、2035年度以降の削減目標と脱炭素電源の構成比率をどこまで上げるかが注目されている。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化などで化石燃料の地政学的リスクは高まっており、いかに純国産の再エネでエネルギー安全保障を確保するかも問われる。 ところが、である。これまでの同基本計画の改定過程で、再エネ普及の観点から専門的なシナリオを報告してきた自然エネルギー財団が、議論の輪からはずされている。理由は、内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(以下、TF)」の3月23日会合で、財団の事業局長・大林ミカ構成員が提出した資料に中国の国家電網公司のロゴが混入したことに端を発する政府の「調査」が長びいているからだ。
■事務的ミス以外の要因は浮上せず 各省庁は、調査によって財団が中国政府や中国企業の影響を受けていないことが明らかになるまでは、財団を意見聴取の対象にしないという。もちろん日本のエネルギー政策が他国の影響で捻じ曲げられるようなことは許されない。政府は検証をしなくてはなるまいが、問題発覚から2ヶ月が経ってもロゴ混入の要因は大林氏の事務的ミスのほかに浮上していない。 はたして国内で他に類のない再エネ系シンクタンクを除外して、幅広い知見を集めたエネルギー論議ができるのだろうか。