緩和調整のタイミング、経済・物価・金融の推移次第-氷見野日銀副総裁
(ブルームバーグ): 日本銀行の氷見野良三副総裁は10日、今後の金融緩和度合いの調整のタイミングは経済・物価・金融情勢の推移次第だとしつつ、最初からコースが決まっているわけではないとの認識を示した。ブルームバーグ東京支局のイベントで英語による講演を行った。
金融政策運営では「慎重に今後のデータを評価し、見通しを見て、各会合ごとにリスクバランスを見ていく。最初からコースが決まっているわけではない」と説明した。具体的には、賃上げのサービス価格への転嫁や来年の賃金動向に関する情報などが重要になり得ると指摘。海外経済や為替変動による輸入物価への影響なども含めて「データの全体像を金融政策決定会合ごとに見ていく必要がある」と語った。
利上げを決めた7月の金融政策決定会合の声明文では、経済・物価情勢の展望(展望リポート)の見通しが実現していけば、緩和度合いを調整していくとの方針を示していることを紹介。実質金利は推計方法によって複数存在するとしながらも、「全てがマイナスであり、マイナス1%以下がほとんどだ」と述べた。
氷見野氏は冒頭、日本の企業や市場、日本経済は「動き始めている」とし、金融政策も「25年間にわたって非伝統的な金融政策を駆使してきたが、今や正常化しつつある」と指摘。7月会合の声明文の方針を説明することなどで、改めて利上げ継続姿勢を示したと言える。
植田総裁発言も紹介
植田和男総裁が2日の石破茂首相との会談後に、緩和的な金融環境で日本経済を支え、金融市場と内外経済の動向を慎重に見て政策を判断するとともに、日銀にはそのための時間が十分にあると発言したことも氷見野氏は紹介した。
石破首相が会談後に、現在は追加利上げを行う環境にないと発言したことを受けて、市場では年内の追加利上げ観測が後退している。米労働市場の堅調などを背景に米利下げペースが鈍化するとの見方も強まり、足元の円相場は1ドル=149円付近と、石破氏の自民党総裁選出後に付けた141円台からは大幅に円安が進んでいる。