阪神、日本ハムなどで活躍の坪井智哉が引退表明
坪井は、開幕から1、2番を打つ外野手としてスタメン出場し結果も残していたが、突如、5試合でスタメンから外され、代打、代走要員となった。ある試合で一塁に出塁して偽装スタートを何度か切ったが、ベンチに帰ると「打者が集中できないから、走る格好などするな」と怒られた。2週間を過ぎたところで出場選手登録そのものを抹消された。「怪我でブランクがあっただけに、最初は感覚を取り戻そうと、1試合1本のペースでヒットを打っていたが、突然、出場機会がなくなった。こういう独立リーグでの外野手は、三振かホームランかというタイプでないと、なかなかチャンスがないことがわかってきたが、そもそも僕のプレースタイルを理解してくれて契約してくれたはず。一軍枠は25人で、そのうち外野手の登録は4人。厳しい世界だが、結果が出ていただけに説明もなく登録を外されたのは納得がいかなかった」。 登録を抹消された選手は、遠征には帯同が許されず、ホームのゲームでは、一塁コーチャーズボックスに立たされる。しかも、攻守交替時には、ひと周り以上も年下の選手に「かたずけておけ」とばかりにポーンとヘルメットを投げられる。「アメリカまで来て俺はコーチャーズボックスで何をしてんだろう」と、強い孤独感と空虚感を覚えたという。坪井は、それでも、ひたむきに「いつかチャンスがくる」と練習を続けて再登録機会を待ったが、さらなる試練が襲い掛かる。 独立リーグでは、チームや選手によって契約形態は多少違うが、球団が選手に住居を供給している。低予算のためモーテルの部屋を何人かの選手でシェアするようなケースも少なくないが、ランカスターの場合は、協力してくれる地元の人の家に選手をホームステイさせる形をとって選手の経済的な負担を解消していた。だが、坪井は、当初からホームステイ先を与えられず、「やっと決まったぞ」と伝えられた家に慣れない英語で連絡を入れると、「その話は断ったはず。悪いけど」と言って電話を切られた。