松本人志氏「訴えの取下げ」は裁判を“すべてなかったことにする”手段 裁判をやめるため「他にとりえた2つの方法」とは?【弁護士解説】
被告の「デメリット」は乏しい
これに対し、「訴えの取下げ」が行われる場合の被告のメリット・デメリットはどうだろうか。 荒川弁護士:「最大のメリットは、訴訟に応じなければならない煩わしさから解放されることでしょう。 日本の訴訟制度では、原告から訴えを提起された場合、被告は裁判の場に出て反論しなければ、原告の言い分がすべて認められてしまうことになります。したがって、訴えの内容がどのようなものであれ、応訴せざるを得ないのです。 そこから解放されるのは、それ自体が大きなメリットです。 これに対し、デメリットは特に思い当たりません。応訴した後に前述の『裁判外の和解』で『不起訴の合意』を結んでおけば、後でまた同じ紛争を蒸し返されるおそれもありませんし」 原告から働きかけて訴訟を終了させる手段は「訴えの取下げ」だけではない。他にも「請求の放棄」「裁判上の和解」がある。 以上のように、原告から働きかけて訴訟を終了させる手段は「訴えの取下げ」だけでなく「請求の放棄」「裁判上の和解」があるが、どれが有利なのかは、訴訟の対象となっている紛争や権利義務の内容・性質によっても、訴訟の形勢によっても大きく異なり、一概に断じることはできない。 松本氏と文春の件についても、「訴えの取下げ」をめぐり、訴訟外で当事者間にどのようなやりとりがあったのか明らかにされていない以上、法的観点から理論的・客観的に指摘できること以外の、安易な憶測や希望的観測に基づく情報発信や意見表明は避けるべきだろう。
弁護士JP編集部