主役は“熟成魚”。代官山の名フレンチ「サンプリシテ」が魚介に舵を切って移転リニューアル
そのカウンターの向こうに、念願のビーフエイジング用の熟成庫が鎮座ましましている。しかし、そこに吊り下げられているのは、肉ではなくサワラやカジキ、ハタといった魚介類ばかり。
「これがマグロのブレザオラで、こっちは梶木のベーコン。これはサワラの生ハムです」。目を輝かせ、プレートにのせた魚介を前に説明してくれる相原シェフ。なんとシャルキュトリーを魚で仕立てているのだ。ブレザオラは本来、牛肉を塩漬けして作る生ハムのことだが、それを相原シェフは本マグロでアレンジしているのだ。ちなみに、熟成に向いているのは、キンメダイやブリといった脂がのっている大型の魚なのだそう。
取材当日、コースを飾った「海シャルキュトリ」は、次のような内容となっている。 【オリーブ/海苔、生ハム/カラスミ、ソシソンセック/プレザオラ、白海老ソブラサーダ/フロマージュ ド テット、熟成鰯/自家製アンチョビ、キャビアサブレブルトン、玉手箱】
上記のソシソンセックとはソーセージのことで、ここではマグロの赤身とトロを使用。魚とはいえ、じっくり熟成させることでまるで肉のようなテイストとなっている。目から鱗のおいしさだ。
そして、サワラの食感はまさに魚の生ハム。水分を程よく抜くことで淡いうまみが凝縮され、じんわりと広がる余韻が滋味深い。また、ソブラサーダは本来ソフトサラミのことだが、相原シェフは、白エビを7日間熟成させ大葉で巻いて提供している。
コースは、このあと「セルベルドカニュ スーナ メカジキ」(セルベルドカニュとは、フロマージュブランと生クリームを混ぜ、ニンニクとハーブを加えたリヨンの郷土料理。スーナは海藻の一種)、イカ墨を使った「墨ブーダンノワール」、日々使う魚介のアラをたっぷり使った「スープ・ド・ポワソン」、熟成が進んだサワラの生ハムを用いたオリジナルの「鰆のシーザーサラダ」、「舞鶴 黒鮑」と続いて、メインの「五島列島林さんのスジアラ」の登場となる。メニューからもおわかりのように、魚介満載!