在宅勤務中の「だらしない服装」は要注意? プロが教える仕事服の選び方
装い一つで、自分の気持ちに変化が起こり、周囲からの扱いも変わってくる──。服装には、想像以上の力があるようだ。「日本服装心理学協会」では、服装が人の心に与える影響を研究している。同協会代表理事の久野氏に、自分の心を安定させ、仕事上のパフォーマンスを上げていく装い方の心構えと、実際の服選びの方法を聞いた。(取材・構成:辻由美子) 【解説】在宅勤務時の装いの心得 ※本稿は、『THE21』2024年12月号特集「「脳」と「心」のトリセツ」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
装いに無頓着なのは、自分を雑に扱うのと同じ
私は、個人向けスタイリングや企業の身だしなみ研修を行なう(株)フォースタイルを立ち上げ、代表を務めています。また、装いが人の心に与える影響を研究する「日本服装心理学協会」の代表理事でもあります。立場上、多くのビジネスパーソンに接していますが、服装が心に与える影響は想像以上です。 ある高級車を扱うディーラーで研修を行なったときのことです。スタッフの方のお一人は、話してみると理知的で聡明なことがわかりましたが、着ているスーツがよれよれしていて、本人にも余裕のない振る舞いが目立ちました。そのせいか、顧客からの評判もいまひとつで、営業成績も伸び悩んでいるということでした。 そこで私が行なったアドバイスは、身だしなみを整えることでした。スーツは、本人の顔色を引き立たせる色合いのものを選び、サイズはよれよれしたしわが寄らないよう身体に合ったものをチョイス。洋服の素材も、高級車を扱う人間にふさわしい品質の良いものに変えて、手入れをきちんとすることをお約束いただいたのです。 一カ月後に会った彼を見て驚きました。別人かと思うくらい自信にあふれ、高級商材を売るにふさわしい風格と信頼感がにじみ出ていました。営業成績も見違えるほど伸びたそうです。服装一つで状況はこれだけ変わるのです。本人の意識が変化するだけでなく、本人を見る周りの意識も変わる。装いが自分と周りに与える影響はそれくらい大きいのです。 ところが、世の中にはまだ「見た目を気にするなんて」とかたくなに思っている方も少なくありません。たしかに、中身がないのに外側ばかりつくろっても軽薄に見えるだけですが、装いのせいで相手に良い部分をわかってもらえないのはもったいないのではないでしょうか。 だらしない格好をしていれば、それなりの扱いしか受けません。貧相な格好をしていれば、人から邪険に扱われるかもしれません。それでも「俺は気にしない」とつっぱねられるくらい強い心の持ち主がどれくらいいるでしょうか。 服は自分の身体に密着した存在です。つまり自分自身と一体化しているもの。極論すれば、ほぼ自分自身と言ってもいいかもしれません。その服をないがしろにするということは、自分自身を大切にしないことにほぼ等しいと私は思います。 自分で自分のことを大切にできない人を、他人が大切にするわけはありません。自分を大切にする、その一つの表れが服装を整えることならば、服装に気を配ることが自分の心を安定させ、周囲からの扱いも変えていく。ひいては仕事上のパフォーマンスを上げていくことにつながるのではないでしょうか。