柳楽優弥の「俳優としての求心力」。『ライオンの隠れ家』に実力派キャストが揃い踏みした背景
柳楽優弥主演×若手注目株の坂東龍汰出演のTBS金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』。放送開始以来、キャスティングや俳優陣の演技の素晴らしさを絶賛する声が後を立たない。 【写真】注目の子役・佐藤大空を優しく見つめる柳楽優弥 本作の企画者でプロデューサーも務めるのは、TBS火曜ドラマのヒット作『私の家政夫ナギサさん』の企画も手掛けた松本友香さん。松本さんへのインタビュー前編では、SNSで注目を集めている、自閉スペクトラム症(以下、ASD)の青年・美路人(坂東)の描き方、坂東さんを起用した理由などについて話を聞いた。 中編となる本記事では、柳楽さんをはじめとする実力派俳優たちのキャスティングの裏側について話を聞いた。 【あらすじ】 市役所で働く平凡で真面目な優しい主人公・小森洸人(ひろと/柳楽)は、自閉スペクトラム症の弟・美路人(みちと/坂東)と二人暮らし。朝は弟と決まった時間に家を出て、退勤後も弟と決まった時間に帰り、常に弟の歩幅に合わせて平穏な日常を懸命に守ってきた。ところが、ある日、「ライオン」を名乗る少年(佐藤大空)がやって来たことで、ある事件に巻き込まれていく。
あえてストレートなキャスティングを避けた
――主人公・小森兄弟のキャスティングの妙に驚きました。洸人の平凡で真面目で優しい青年という設定を聞くと、目ヂカラが強く個性的な柳楽優弥さんはすぐに浮かびません。中村倫也さんとか、癒し系の方をシンプルにイメージしてしまいそうです。 それに、ASDの美路人という難役にも、染谷将太さんなど「演技派」イメージが定着した方を思い浮かべてしまいます。でも、本作を観たあとでは、もう柳楽さんと坂東さんしか考えられないです。 松本友香P(以下、松本P):私も最初、イメージからストレートに考えたキャスティングはもちろん頭にありました。でも、例えば洸人は、閉塞感や諦めみたいなものを抱えているので、ストレートにキャスティングすると、作品としても閉塞感のある、暗い雰囲気になってしまわないかという心配がありました。 物語の中で「ウミネコ」がキーワードとしてありますが(「ウミネコがどこを飛ぶかはウミネコの自由」という美路人のセリフなど、本作では「自由」の象徴として描かれている)、「外に出たい」「自分を解放したい」「進みたい」といった願望や強さを内に秘めた人が、成長や変化していく姿を描きたいと思ったんですね。 ――そこで浮かんだのが柳楽さんだった、と。 松本P:ちょうど主演のキャスティングを考え出していた2年前ぐらいに、たまたまこの24年10月期あたりに柳楽さんのスケジュールが空く話を聞き、柳楽さんだったらパブリックイメージとのギャップがあって、この役に良いんじゃないかと思ったタイミングで、映画『さかなのこ』(2022年)を観たんです。ヤンキー役でしたが、『さかなのこ』の温かい世界観の中で、のんさんの親友として心優しく寄り添う役がすごく温かくて素敵だったので、洸人に絶対に合うと思ったんです。