なぜ日本の「49歳の女性たち」は世界で一番子どもを産んでいないのか…その裏の「残酷な現実」
経済的な不安定さが原因
他の様々な日本の調査や研究からも、男女問わず正社員の方が、結婚への意欲や実際に結婚する確率が高いことがわかっている。OECDの2024年報告書も各国の状況や様々な研究を分析し、若者が結婚し子どもを持つには何よりも本人の安定した経済的見通しが立つことが重要だと指摘している。日本でもこれまで往々にして女の子だから不安定雇用でも収入が低くてもいいんだ、いずれは結婚するのだからと言われてきた。だが、経済的に不安定で先の見通しも立たない状況は、女性から結婚や子どもを持つ希望を奪っているのだ。 1975年生まれの女性たちが就職活動をしたのは、バブル崩壊後まもない「就職氷河期」といわれる時代である。1990年代後半には、大学卒業生の2割前後が無業かアルバイトのまま卒業している。女性の非正規化も進んだ。男性たちにも同じように不安定な雇用の人が増えたので、パートナー形成は難しかっただろう。 女性の非正規というと、結婚や子育てでいったん退職した人が再就職するから非正規が多くなると考えがちである。だが女性の中には、初職からずっと非正規で未婚のまま、不安定で経済的にも見通しの立ちにくい暮らしをしている人も少なくない。
使いすてにされてきた、女性たち
一方、早い時期に安定した雇用を手に入れられた人は、パートナー形成においても有利である。2000年代後半からは育児休業制度も急速に利用者が増え、2010年代には出産退職者が大きく減少している。様々な支援制度を利用でき、上の世代より子どもを産む条件に恵まれた人もいただろう。1975年生まれを含む世代は、女性の経済・雇用の安定・不安定の差が、その後の結婚や出産機会の差に結び付いた世代だともいえる。 リクルートの2024年11月の発表によると、最近では人手不足で、非正規の女性も正社員で再就職できる人が増えているという。とりわけ30代以上の女性について見ると、2023年に転職で非正規から正規に転換できた人数は、2013年の7.3倍だという。しかし、こうしたコロナ以降の人手不足による正社員登用の波は、1975年生まれの女性たちには遅すぎたのではないだろうか。 人手不足の中で女性の活躍が重要だと言われながら、常に目先のコスト削減のために不安定雇用の中で安く使い捨てにされる女性たちがいた。そのような社会は、女性に結婚や子どもを産むことをあきらめさせ、少子化をさらに進めて自分たちの社会の存続そのものを危うくするのだ。
前田 正子(甲南大学マネジメント創造学部教授)