習近平主席もかばいきれない汚職だったのか…「福建幇」出身で「軍部の習主席代理人」が失脚
最側近の高官に対する調査は、前年の李尚福国防相とは比べ物にならない波紋を招くとみられます。テキサス大オースティン校の政治学教授のシーナ・グライテンズ教授(政治学)は「苗氏は国防相より地位が高い中央軍事委員で政治工作部を率いる人物だ。そうした点を考慮すると、苗氏の停職はとんでもなく重大なことだ」と述べました。 中央軍事委員会は、中国軍の最高意思決定機関、指揮機関であり、習近平主席を含む6人の委員で構成されている。 ■習主席の直系人物の捜査相次ぐ 苗氏に対する取り調べの事実は、元中国海軍司令部中佐出身で米国に亡命したヤオ・チェン氏が11月11日に明らかにした。X(旧ツイッター)への投稿で「中央軍事委の内紛が高まり、公になっている。中央軍事委員であり政治工作部主任である苗氏が逮捕され取り調べを受けている」という内容でした。 11月12日には「秦生祥・元中央軍事委改革編制弁公室主任、袁華智・海軍政治委員、秦樹桐・陸軍政治委員が10月に調査を受けた当時、苗氏も既に逮捕されていた」とし、「最大の関心事は誰が今回の粛清を主導しているのかだ」と書きました。 秦氏は2016年に習主席の軍再編作業を統括しました。 袁氏は苗氏の後任として海軍政治委員に抜てきされ、秦氏は苗氏が習主席と親交を結んだ当時に勤務していた第31集団軍出身です。このように軍内の習主席直系とされる人物が続々と調査を受けていることから、ヤオ氏は「誰が粛清を主導しているのか」と指摘したのです。 ■福建幇に対抗する張又侠氏が急浮上 海外では中央軍事委第1副主席を務める張又侠氏(74)に注目が集まっています。張氏は中国建国の功労者である張宗遜氏の息子で、1979年に中越戦争に参戦した人物です。父親が功労者である上、参戦経験もある軍の元老なので、軍内部の信望が厚いとされます。8月に中国を訪問したサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、習主席とは別途に張氏と会談しました。 張氏は習主席と同じ太子党出身ではあるが、中央軍事委では習主席が抜てきした何衛東副主席、苗氏など福建幇系とは関係がぎくしゃくしており、両者による権力闘争が起きたのではないかという分析が示されています。 習主席がかばいきれないほど汚職問題が深刻だったとする見方もあります。政治工作部は中国軍の汚職の頂点と言えます。中国軍幹部の昇進や異動は政治工作部による評価過程を経ます。政治工作部の評価によって命運が決まるだけに、高い評価を受けるために賄賂が横行するといいます。苗氏の前任者である張陽氏は麻袋でかき集めたとして、「張麻袋」という別名で呼ばれていました。張氏は2017年に贈収賄の疑いで取り調べを受けている途中に自ら命を絶ちました。 崔有植(チェ・ユシク)記者