【全文】東芝・田中社長「直接的な指示をした認識ない」 不適切会計で会見
経営陣は利益というものをどんな風に考えていた?
質問者(1):NHKのノグチと申します。よろしくお願いします。全て田中社長にお伺いできればと思います。最初にまず、きのう第三者委員会の報告書が提出されましたが、厳しい言葉も多かったと思います。これについて率直にどう受け止めてらっしゃるのか。また、これを、指摘を全面的に受け入れるのか、反論や意見の違い等あれば併せて教えてください。 田中社長:はい。ありがとうございます。大変時間の限られた中で、第三者委員会、および補助者の皆さまには多大な時間とリソースを使っていただき、膨大な資料、そして多くの当社関係者へのインタビューなど、大変精力的にかつ、長時間に渡る調査をいただきました。まず最初に、第三者委員会の皆さま方の調査につきまして、あらためて敬意を表したいと思っております。 内容につきましては、すでに昨日および本日公表させていただいておりますけれども、内容を真摯に受け止め、今後の対応を図ってまいりたいというふうに思っております。以上でございます。 質問者(1):もう1点です。今回、経営陣の刷新という会社始まって以来の事態になってしまいましたが、なぜこのような事態を招いてしまったのか、その原因についてと、社長ご自身も辞任という重い決断をされましたが、その理由について教えてください。 田中社長:第三者委員会の調査報告書に基づきまして、真摯に受け止め、そして当社といたしましてきちんと対応をする。そして今後、新たな体制を構築し、経営刷新委員会でさまざまな対策、あるいは新しい当社を構築していくと。そのためには大幅なこれまでの経営陣の刷新が必要だというふうに認識をした次第でございます。 司会者:よろしいでしょうか。 質問者(1):最後にもう1点お願いします。今回の問題が起きてから、田中社長は今回の問題をきっかけにして会社がもっと良くなるということをずっとおっしゃっていました。今後新しい経営陣にはどのような会社にしてもらいたいか、どのような成長路線を進めていってもらいたいか、あらためてお聞かせください。 田中社長:一番最初の記者会見でそのように申し上げました。その気持ちは今も変わっておりません。今回の事案、そして第三者委員会の皆さま方のご指摘を真摯に受け止め、新しい東芝の構築。これを私は本日をもって辞任をいたしますけれども、室町会長兼社長、そして経営刷新委員会の皆さま方、そして社外の専門家のご意見を伺いながら構築をしていっていただきたいというふうに思っております。 司会者:よろしいでしょうか。それじゃあ前の真ん中の、こちらの白いシャツの方。 質問者(2):すいません、どうもありがとうございます。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮本と申します。大きく2問ございます。 1点目、田中社長にお願いしたいんですが、利益の概念ですね。一定期間の事業活動の目標であったり、あるいはその結果であるというように認識しておるんですが、田中社長において、あるいは東芝の経営陣において利益というものをどんなふうに考えてらしたのか。それが一般的に言われているものとどうずれていたのか、その辺りの考え方、今のお考えについてコメントいただければと思います。じゃあ先に質問続けます。 前田CFOにお願いしたいんですが、だいたい概算で純資産の毀損額は4,000億円ぐらいになるというふうに考えてますが、そのイメージで正しいかどうかということと、あと今回の遡及修正に伴って財務制限条項に抵触するような事態になるかどうかですね。それについてのコメントをいただければと思います。 田中社長:はい。ご質問ありがとうございます。利益についてどういうふうに考えるか、あるいはそのずれがどういうふうに生じたのかというご質問とご理解させていただきます。利益のみならず企業を経営していく中で売り上げ、利益、その中からきちんと雇用を守り、あるいは事業の拡大を目指す中で研究開発投資、設備投資、そして最も重要だと思っておりますのは、私どもの経営理念の1つでもあります、豊かな社会への貢献。そういったことを継続的に、かつ持続的に行うためには利益というものは大変重要です。 また株主の皆さま、あるいは投資家の皆さまに対して、その投資に見合う配当を含めたお返しをするということは非常に重要だと思っております。ただ、その利益そのものが捻出される過程におきまして、当然ながら順法、特に今回のような会計の処理、不適切な会計処理に基づく利益ではあってはならないというふうに思っております。適正な、あるいは厳正な会計処理に基づく利益の創出、決して利益の創出そのものが悪いとは思いません。ただあくまでも大前提として、適正かつ厳正な会計処理、その辺りが今回ずれていたのかなというふうに考えて下ります。以上でございます。 前田専務:はい。それではご質問にお答えさせていただきます。概算で資本の額の影響は4,000億が正しいかと。かような質問をいただきました。どうもありがとうございます。この点につきましては現状、固定資産の減損、繰延税金資産の引き当て等、修正が今現状、第三者委員会のご報告値を踏まえて、現状、固定資産の減損につきましてはその要否、ならびに時期、ならびに金額、長期繰延税金資産に関する評価性引当金計上の要否、それに加えましてその他の過年度の会計処理の妥当性について、現状、当社で検証を行い、その上で新日本監査法人が監査を行っている現況にございます。 この監査をまだ完了してございません。これが完了したときにいくらかということで、現状については金額を把握してございません。なお有価証券報告書につきましては当局にご提出するのが8月末ということで、鋭意進めてございますが、見通しが立った時点で適時開示をするべく今、鋭意、監査法人に対して全面的に協力をして金額の算定等々について作業を進めている最中でございます。 2点目、ご質問を頂戴いたしました、いわゆる財務制限条項についてでございます。現状、銀行借り入れの財務制限条項に抵触する、このような指摘は頂戴してございません。今後も各金融機関さまと緊密に連携を申し上げ、それに加えて今回の事象についても丁寧にご説明を差し上げることによりまして、ご指摘のような事態、財務制限条項の抵触、これについては万全を期して回避を図ってまいりたいと。かように考えている次第でございます。以上、お答え申し上げました。 質問者(2):財務制限条項に関して1点だけ確認を。遡及修正をした結果としても大丈夫だというところは、検証をある程度はされているということで大丈夫でしょうか。 前田専務:はい。その辺も金融機関さまに丁寧にご事情を説明して、回避すべく万全の努力をしてまいりたいと、このように考えている次第でございます。どうもありがとうございました。 司会者:よろしいですか。それじゃあ後ろの女性の方。 質問者(3):テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』の大江と申します。田中社長に伺います。どうしてこのタイミングまで不正を断ち切ることができなかったんでしょうか。 田中社長:その内容につきましては第三者委員会の報告書をご覧いただきたいと思います。 テレビ東京:不適切な会計処理という表現をなさっていますけれども、これは粉飾というふうに考えていらっしゃいますか。 田中社長:粉飾という言葉をどのように定義するか等に関わると思いますけど、第三者委員会報告書の中で適切な会計処理というふうに記載がされてます。それ以上のことは、お答えは控えさせていただきたいと思います。 質問者(3):この利益至上主義に陥ってしまったのはどうしてなんでしょうか。どういう背景があるというふうに考えていますか。 田中社長:先ほど申し上げましたように利益を上げること自体は決して悪いことではない。先ほども申し上げましたようにさまざまな株主さま、あるいは投資家の皆さん、そしてわれわれが事業を持続する、あるいは継続するために雇用の確保、あるいは研究開発投資、設備投資、そういった事業活動を通じて社会に貢献していく、あるいは豊かな社会をつくり出していくと。そのためには必要なことだというふうに思っています。 ただその、先ほども、繰り返して大変申し訳ないですけれども、その利益というものを、あくまでも前提となりますのは適正、あるいは厳正な会計処理に基づく利益なければいけない。その辺の認識あるいは知識、第三者委員会の報告書の中にも指摘をされておりますけど、そういった意識、あるいは知識を含めた認識のところでご指摘のとおりの課題があったんではなかろうかというふうに思っております。 質問者(3):最後に1点、今回のことで東芝ブランド、大きく傷付くことになったと思いますけれども、この信頼を回復していくためにはどういうことが必要だと考えているでしょうか。 田中社長:大変大きなブランドの毀損、当社140年の歴史の中で最大ともいえるブランドのイメージの毀損があったと認識をしております。この今回生じた事案等、一朝一夕では回復できないと思います。20万人の従業員が一丸となり、そして室町会長兼社長および先ほどご説明させていただきました、経営刷新委員会の皆さん、そして社外の専門家を踏まえた今後の再発防止策、あるいはガバナンス、そして日々の活動を通して1日1日全力で取り組んでいく。そういう姿を皆さまにご理解いただくしかないんではないかというふうに思っております。時間がかかってもやり遂げなければならないことだと思っております。 司会者:よろしいでしょうか。じゃあ、隣の後ろの男性の方。 質問者(4):メリルリンチ日本証券の平川と申します。田中社長にお伺いしたいのですけれども、本件の直接的な原因は報告書を読んで学ばさせていただきました。しかしながらその根源的な問題としては、収益力の低い事業で収益を上げようとしていたということにあると感じております。なぜほかの企業のように事業ポートフォリオの組み替えができなかったのか。すなわち競争力を失った、収益力を失った事業がポートフォリオに残っていたのか。その背景について教えていただければと思っております。また、もし財務状況が良ければできたのか、また今後の経営陣に託すとすればどのようなメッセージを託すのか、教えていただければと思います。以上です。 田中社長:ありがとうございます。今回の不適切な会計処理、先ほどご指摘いただきましたように収益率、あるいは課題事業といいますか、に、起きてるんじゃないかと。その背景というものは今後、第三者委員会の調査報告書を精査した上で、私どもなりの原因、事業という面での原因を考えていかなければいけないというふうに思っております。当然ながら事業、東芝グループさまざまな事業をやっております。幅広い事業全てが収益率が高く、そして競争力があればいいわけですけれども、中には非常に厳しい事業もあります。そして今現在、非常に収益率がたとえ良くても、将来にわたって継続的に収益率を確保できるとは限りません。従いまして常に競争力の強化、そして成長性について考えていかなければいけないというふうに思ってます。そういったものが今回の不適切な会計処理の1つの原因であったかどうかにつきましては、今後、報告書を精査した上で、当社といたしましてきちんと検討をしていかなければいけないというふうに思ってます。 ただ、今回の事案といいますか、第三者委員会の報告書だけではなく、常に課題事業あるいは競争力の低い事業については会計処理とは関係なく、常にポートフォリオの変革、あるいは競争力の強化、そういったものは会計処理とはまったく別の事業という観点で継続的に考えていかなければいけないというふうに思っております。以上でございます。 司会者:よろしいでしょうか。それじゃあ前の列の真ん中の方。そちら。 質問者(5):日本経済新聞のイハラと申します。2点よろしくお願いします。1点目が、田中社長が前回、これまでの社長にご就任されてから、新しい中計を達成しようとか、あるいはその半導体1本足になりかけていた事業を安定させようとかいろんなことを考えてやってこられたと思うんですが、この段で辞任されると、最も大きなやり残しとして挙げるとすれば何がありますでしょうか。 田中社長:ありがとうございます。やり残したことは大変残念ですけれども、いろいろあります。常に当社の収益率と、あるいは収益という面では、ご指摘のとおりNANDフラッシュメモリという点を皆さま方からもご指摘をいただいた。それを2本、3本、4本と増やしていきたいというお話を以前からさせていただきました。その途上にあるというふうに思っております。 ただ、収益の柱を作るということと、そして今回の不適切な会計処理というものは、必ずしも一致してないところがあると思います。従いまして、やり残した中で、収益の柱を2本、3本、最終的には5本とか私、申し上げてたと思いますが、に向けて新しい体制で進んでもらいたいというふうに思っております。 質問者(5):もう1点お願いします。特にパソコンの有償支給のところなんですけれども、田中社長はご就任されてから利益の、利益が、その在庫がたまって膨らんでいく分っていうのを削減されようとされていて、14年9月のあのパソコンのリストラでもそういったものを消そうというふうな取り組みがあったと思います。ということは、逆に言えば、これが不適切な利益であると認識されていたのか。それをなぜもっと早く対応が取れなかったのかについて教えていただけますでしょうか。 田中社長:その点については、第三者委員会の報告書をご覧いただきたいと思います。 質問者(5):最後に1点だけ、すいません。今回の件の責任は経営陣にあるとおっしゃられましたけれども、前回の会見では、プレッシャーをかけるのは経営陣として当然だと。しかしそれを、法律の範囲で適切に行われなかったと。その内部統制に問題があったかもしれないというご指摘がありましたが、その認識というのは、今回は経営陣が積極的に不正を、不適切な会計を実質的に指示を出してたみたいな記載もあるんですけれども、その責任の内容について、ご自身のお言葉でその認識は変わられたのか、前回の会見のときからですね。それとも、下が順法意識がなかったっていうのが問題であったのか、そこら辺の認識の変化があるのかについて教えていただけますか。 田中社長:個々の事案についてのお答えは控えさせていただきたいと思いますけれども。順法、あるいはコンプライアンス、あるいは適正な会計処理。先ほどからお話をさせていただいておりますけれども、大前提です。そういった中で適正な利益を上げる。あるいは事業を拡大していく。そのための経営者としての考え方といいますか、を、追求していかなければいけないというふうに思ってます。プレッシャーがあるから不適切な会計処理をやっても許されるんだというふうなことではなかったとは思いますけれど、そういうものが少しでもあったことが今回の原因だとすれば、徹底的なコンプライアンスのみならず、経営陣として深くそして大きく反省をしなければいけないというふうに思っております。 質問者(5):ということは、その大前提であるところをないがしろにさせるような指示をご自身がしたという認識は、やはりないということでよろしいんでしょうか。 田中社長:直接的な指示をしたという認識はございません。 質問者(5):ありがとうございます。 司会者:よろしいですか。4列目のその男性の方。