名スカウトのドラフト採点「成否ムラのない平均ドラフト。あえて90点と60点の球団を指摘するのなら阪神と西武だ」
即戦力バランス型補強として評価したのは、阪神、横浜DeNA、ロッテの3球団。 「横浜DeNAは1位で得意の明大ルートを生かし入江大生(明大)を単独指名し、2位で大学ジャパンで4番を打った牧秀悟(中央大)を押さえた。リストのきいた長打が自慢。佐野、宮崎らの中に入ると、刺激を受けて力を発揮するかもしれない。故障者が出た投手陣と課題の二遊間を1、2位で獲得できたのだから成功だ。ロッテは早川を外したが、1位で左腕としては早川に次ぐ評価をしていい鈴木昭汰(法大)と2位で中森俊介(明石商高)を指名できた。即戦力と素材型の大物2人を取れたことで目的はほぼ達成しただろう」 それぞれの目的が見えた、平均ドラフトの中にあって、あえて最も成功した「90点以上」の球団を挙げるなら片岡氏は阪神だという。 「福留がチームを去り、糸井も怪我続きで外野のポジションがひとつ空いてしまっているところを佐藤で埋めることができた。バッティングの間が取れず、関西学生リーグのレベルで今秋は打率.257程度しか打てていないのは気になるが、足がある選手なので使いやすい。大山とクリーンナップを打てば夢はある。2位の左腕の伊藤将司(JR東日本)は実戦型で3位の佐藤蓮(上武大)は馬力がある。5位の村上頌樹(東洋大)も故障明けだが、3年時にはMVPをとった右腕。内野手、捕手とバランスよく指名しているし、昨年の甲子園組で固めたドラフトに続いて、いいドラフトだったと思う」 阪神に続く「70点から80点」の成功の第2グループとしては、楽天、中日、横浜DeNA、ロッテ、日ハムの5球団をリストアップした 一方「60点以下」の失敗球団をあえて挙げるとすれば西武だという。 「失敗とまでは言わないが“あれ?”とは感じた。1位の渡部健人(桐蔭横浜大)はサプライズ指名。176センチ、112キロの巨漢のロングヒッター。おかわり君や、山川、森らの“関取型“の主軸を育てた西武らしい指名で、そういうノウハウを持っているチームだけに期待は高まるが、1位でなくとも指名はできただろう。早川を1位入札したように投手の補強が課題のはずなのに投手は2人だけ。2位の佐々木健(NTT東日本)は富士大出身の西武ルートの左腕で、5位は未知数の準硬式出身投手の大曲錬(福岡大)。1位で大学生にもう1度勝負して、渡部は2位で良かったのかもしれない。野手の高年齢化対策がチームの課題ではあるが、少し戦略がずれているように見えた」 では、巨人とOBとして来季への浮上が気になるヤクルトはどうだろう。高津臣吾監督は、片岡氏がスカウト時代に指名した人物。控え投手をあえて指名したという逸話がある。 「巨人は、ある意味、余裕のドラフトだった。即戦力投手が欲しいはずだが、前述したように来年よりも将来性を買った選手が目立つ。ヤクルトは、2度もクジを外したが、まだ木澤尚文(慶応大)が残っていてよかったんじゃないか。最速155キロを投げ、球筋はばらけるが落ちるボールもある。故障がちなのは心配だが慶応ボーイにしては気持ちを出すタイプ。2位も大学生の山野太一(東北福祉大)。このあたりが即戦力でどこまでやれるか。守備ではすぐに通用するショートの元山飛優(東北福祉大)を4位で、五十幡に負けない足と評判の外野手、並木秀尊(獨協大)を5位で取れた。1軍で使える2人。最下位チームがやるべきドラフトだったとは思う」 最後に片岡氏は、2020年のドラフトをこうまとめた。 「私が一押しのシャピロ・マシュー・一郎投手(国学院栃木)がかからなかったのは残念だった。ほとんど試合で投げていない投手だけに大学、社会人に進んだ後を見守ろうということだったのか。またメジャー帰りの田沢純一も漏れた。34歳の先のない中継ぎ投手にお金を使うことを全球団が躊躇したのは十分に考えられる結論。いずれにしろドラフトの本当の答え合わせは5年後、10年後なのだ」