誇り高い戦士たちは戦後、国造りを怠り目の前の大金に手を付けた 民主化が失敗した理由は何か。これからどうなるのか【アフガン報告】6回続きの(2)
アフガニスタンの民主化が失敗した大きな要因は汚職だ。巨額の国際支援が闇に消え、政治不信を招いた。アメリカのアフガン復興担当特別監察官事務所は2001~19年の支援総額のうち、調査対象の30%が「無駄遣いと不正」で失われたと指摘している。長い内戦を戦い抜きイスラム主義組織タリバンを追放したアフガン人は、私欲追求に専念し国造りを怠った。そしてタリバン復権を許した。民主化失敗は国際社会だけの責任ではない。アフガンの誇り高い戦士たちは、なぜ汚職に走ったのか。(敬称略、共同通信=新里環、木村一浩) 「日本での生活は地獄になるよ」アフガンで日本のために働いた大使館の現地職員、外務省が厄介払い?
誰もアフガンのことを考えず、アメリカ製の民主主義を押しつけた 民主化が失敗した理由は何か。これからどうなるのか【アフガン報告】6回続きの(1) ▽予算の半分以上は汚職で消えた 「未来は明るい。日本メーカーの工場と高層ビルが立ち並び繁栄した国になる」。民主化プロセスが本格化した2003年にそう確信していた北部同盟の元兵士シャヒド(53)=仮名=は、民主政府の国防省で調達と監査部門の幹部を長く務めた。国際社会から流れ込んでくる物資と巨額の支援金で国防予算は潤沢だった。 だが、国造りが本格化するのに合わせて汚職が目立ち始めた。軍では兵器から食材まで、高級品の購入予算を請求して安物を仕入れ差額を流用する手口が横行した。2000年代後半、南部の軍有地でホテルや豪邸の不正開発が進んでいると知り現地調査に入ると「金ならやる。調べから手を引け」と、大統領カルザイの親族に脅された。国会議員の不正開発を調査したときも「文句を言うな。おまえも金を受け取れ」と迫られた。北部の空港建設現場を確認に行くと、予算はすべて消費された後なのに半分も完成していなかった。
部隊によっては、給与支払い対象として登録されている兵士の半分近くが、実際には存在しない「幽霊隊員」というケースもあった。受け取る者のいない給与は部隊の幹部らが着服していた。 「大統領から末端の兵士まで汚職まみれだ」とシャヒド。「予算の半分以上が汚職で消えた」 ▽民主主義は国を破壊するのか 日本の支援機関で15年以上働き、現在は関東地方で難民として暮らすハシム(48)=仮名=は「タリバン追放後の5年ほどは、治安改善と民主主義への希望が大きかった」と振り返る。タリバンが去り、4人の娘たちは好きな学校を選び、自由に街を歩けるようになった。だが2006年ごろから治安が悪化して犯罪も増え、汚職が深刻化した。「母の年金を受給するために年金額の6割を賄賂に使った。賄賂を払わなければ何も動かないからだ」という。 公務員の給料は低いままで失業率も高止まり。治安機関の能力は向上せず、タリバン復権前年の2020年には、強盗や誘拐が怖くて夜間に外出できなくなった。