日本ゼオン、電池材料の売り上げ目標を60億円下方修正 市場鈍化や開発遅れで
日本ゼオンは11日、電気自動車(EV)市場の成長率が想定より鈍化していることや、新製品の開発が遅れていることから、中期経営計画での電池材料事業の売り上げ目標を下方修正すると発表した。2023年度から26年度までの電池材料事業の投資も当初計画より60億円減額して210億円とする。今後競争力のある新製品の開発を継続するとともに、欧米での現地供給体制を拡充するなどして需要拡大を見込む2030年度に向けて巻き返しを図る。 23年度から26年度までの現行の中期経営計画では、電池材料事業の売上高を19年度の5.9倍にする目標を掲げていた。23年度の売上高実績は19年度の約1.5倍にとどまっている。 欧米でのEV市場の成長率が想定よりも鈍化していることや、新製品の開発が計画よりも遅れている。さらに、同社が取り扱っていない正極材料にリン・鉄・リチウムを使用する低価格で安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池のシェアが拡大している。このため、26年度の電池材料事業の売り上げ目標を当初目標から約6割引き下げて19年度比2.4倍に下方修正した。 電池材料事業向け投資計画も見直す。3年間の新規投資計画を当初計画より2割以上削減する。同社全体の新規投資計画も3年間で1500億円と、当初計画より200億円減額する。 ただ、電極製造時に水や有機溶剤を使用せずに成形できる低コストで環境負荷も低減できる「ドライ成形法」を電池メーカーと連携して開発するなど、競争力の高い電池材料の開発は継続する。欧米市場で電池材料を現地で供給する体制を整えるなどして受注を開拓していく。米国で電池材料の生産能力を増強するほか、欧州でも生産能力の引き上げを検討する。 電池材料事業は26年度までは想定より低い成長となるものの、30年度までの市場拡大に合わせて事業を拡大できるよう準備する。