イーロン・マスクは"史上最悪の相棒"である…トランプ次期大統領の「偉大なアメリカ」がたどる残酷な未来
■陰謀論と「資本」「AI」の組み合わせは最悪 ――SNSで爆発的に拡散される偽情報と陰謀論がもたらす最大のリスクは? 人々はトランプ氏の発言の多くを信じた。真実ではなく、証拠もない、事実と矛盾することであるにもかかわらず、だ。(SNSで)アッという間に広まるため、ウソを暴くのは至難の業だ。その結果、真実として受け入れられ、既成事実化してしまう。 今後、事態はさらに悪化する。その理由の一つが、人工知能(AI)などのテクノロジーだ。それに加え、トランプ氏と、(イーロン・マスク氏など)寡頭政治を展開する彼の支持者たち、つまり、「(米国版)オリガルヒ」がソーシャルメディアを占拠していることを考えても、状況は悪くなるばかりだ。 ■「うちのSNSでは陰謀論は広めさせない」というルール作りが必要 ――日本でも、安倍晋三元首相の銃撃事件をめぐり、「真犯人は別にいる」「リベラル派の陰謀」といった真偽不明の情報がソーシャルメディアを駆け巡っています。陰謀論の厳格な規制は可能なのでしょうか。 できないことはない。そのためには、まず、ルールを作り、それを遵守する必要がある。だが、ユーザーが自分の主張を言ってはいけないということではない。要は、ソーシャルメディア企業が投稿の(絶対的)真偽を決めるわけではないということだ。テック大手が仮に規制をしても、投稿の真偽を判断したことにはならない。 規制とは、各テック企業が、「ほかの場所で何を言おうがかまわないが、当社のSNSでは、世の中に害を及ぼすような陰謀論を広めてもらっては困る」という意思表示をすることだ。一部のユーザーが離れていく可能性もあるが、(規制を評価する)新たなユーザーを獲得できるかもしれない。ネットの安全性を少しでも高めることが会社の利益につながる。 ---------- 肥田 美佐子(ひだ・みさこ) ニューヨーク在住ジャーナリスト 東京都出身。『ニューズウィーク日本版』編集などを経て、単身渡米。米メディア系企業などに勤務後、独立。米経済や大統領選を取材。ジョセフ・E・スティグリッ ツなどのノーベル賞受賞経済学者、ベストセラー作家のマルコム・グラッドウェル、マイケル・ルイス、元米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)ジョン・ボルトン、ビリオネアIT起業家のトーマス・M・シーベル、「破壊的イノベーション」のクレイトン・M・クリステンセン、ジム・オニール元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長など、欧米識者への取材多数。元『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』コラムニスト。プレジデントオンライン、月刊誌『フォーブスジャパン』、ダイヤモンド・オンライン、東洋経済オンラインなど、経済系媒体を中心に取材・執筆。『ニューズウィーク日本版』オンラインコラムニスト。 ----------
ニューヨーク在住ジャーナリスト 肥田 美佐子