「一斉入社・一斉教育の採用を改める」 デジタル人材獲得へインターンシップ拡大 NECは1千人以上 富士通は23年度比で10倍に
デジタル人材が不足する中、大学生が一定期間、企業で働くインターンシップにも変革の波が押し寄せている。NECは今年度のインターン募集で過去最大規模の1000人以上を募集。生成AI(人工知能)や生体認証など150テーマの中から職場を体験してもらう。富士通は、1~6カ月の長期間の有償インターンを拡大。個人の状況に応じて参加時期や入社時期を柔軟に調整し、年間を通じて幅広い人材に機会を提供する。 【関連写真】電機各社の今年の入社式の様子 NECは、2024年度の受け入れ人数を前年度の約900人から100人以上拡大。世界トップ級の技術を持つ顔認証や生成AI、サイバーセキュリティーなど約150テーマで行う。 体験内容は技術系や営業系、スタッフ系と多岐にわたるメニューをそろえた。特に国の防衛費増額で事業展開を強化する航空宇宙領域では60人規模の大規模募集を行うほか、NEC独自開発の生成AI「cotomi」の体験コースも用意。最先端の研究開発に携わる「有償・長期実践型の研究インターンシップ」は、AIなどの14領域で90人程度を募集する。 NEC人材組織開発統括部プロフェッショナルの松尾敬信氏は「インターンシップでは課題発見・解決能力や自主的に学び続ける力の育成を目指している。短期間に数十社と向き合う従来型の就職活動では深めきれない、個人と企業の価値観のすり合わせにつながる。将来の仲間を増やす重要な施策だ」と話す。 一方、長期の有償インターンシップに力を入れるのが富士通だ。23年度まで年間30人程度だった長期インターンを26年度には300人にまで拡大する。 従来1~2週間程度だった業務体験型から、より実践を重視した長期の有償インターンを拡充。大学での研究や学外活動を通じて専門スキルや経験を持つ学生向けに、各領域のスペシャリストと一緒に実ビジネスに取り組む。期間は1~6カ月間で時給は1400円程度。 富士通人材採用センターの田中雄輝シニアマネージャーは「学業との両立や既卒者の参加を促進するため、これまでの一斉入社・一斉教育の採用形態を改める。個人の状況に応じてインターンの参加時期や入社時期を柔軟に調整し、年間を通じて幅広い人材に挑戦の機会を提供していきたい」と話す。 NECと富士通は、新卒採用数が700~800人と同規模。両社ともに、個々の社員の能力や成果に基づいて評価・報酬を行う「ジョブ型」に舵を切る。NECは今年4月から全社員を対象に導入。富士通は、22年4月の一般社員に加え、25年度からは新卒採用にもジョブ型を導入する。 両社は、企業の成長の鍵を握る採用市場で、インターンシップを軸に特色を生かした戦略を打ち出し、優秀な人材の獲得につなげる狙いだ。
電波新聞社 報道本部