時代遅れになったベンダー一人語りイベント 集まるイベントには理由がある
ITベンダーの「自分語り」イベントはそろそろ時代遅れ。製品やサービスのことより、顧客がなにを欲しているのか、改めて考え直すべき時期になっている。
先日、取材でウイングアーク1stのUpdata Now 24に行ってきたが、掛け値なしに満足感も高かった。理由ははっきりしており、想定する参加者の関心事に徹底的にフォーカスしていた点である。サービス精神旺盛なのだ。 プライベートイベントでありがちなのは、ベンダーの戦略や製品を一人語りしがちなこと。自社の戦略を知ってほしいという気持ちはわかるし、実際に伝えるのが上手なベンダーもいる。でも、B2Bイベントに参加するモチベーションは「自社の業務に役立つか」の一点。イベントの感想を上司に聞かれて、参加者がベンダーの戦略を話したところで、「じゃあ、それってうちの会社に役立つの?」と問われておしまいである。 その点、Updata Nowは毎年ビジネスパーソンの関心事にフォーカスしている。去年は「DX」で、今年は「生成AI」。2時間近い基調講演からして、田中潤社長の話は15分足らず。「もっと話さなくていいんですか?」とこちらが心配になるくらい。あとはテーマにあわせたトピックを、マイクロソフト、さくらインターネット、デジタル庁、みずほ銀行などのゲストが話すという構成だった。 イベント全体で見ても、ウイングアーク1stの話は必ずしも前面に出ているわけではなく、市場、最新動向、事例など、「とにかく参加者に役に立つ情報とヒントを持って帰ってもらいたい」という主催者側の思いをひしひしと感じた。だから、どのセッションも迷い箸してしまう内容だったし、実際に参加者の満足度もきわめて高いと聞く(関連サイト:ウイングアーク1stがたどってきたData Empowerment Companyへの道)。集まるイベントには理由がある。ベンダーの一人語りイベントは、つくづく時代遅れになったなと感じた。 文:大谷イビサ ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。 文● 大谷イビサ 編集●ASCII