アフリカの異常気象による「最悪のシナリオ」が現実に… 気候変動→資源減少→紛争増加 日本も他人事ではいられない
2023年11月下旬、アフリカ・ケニア東部のトゥーラ近郊。取材のため車で通りがかった私は、赤茶色の濁流を前に立ち往生していた。道路のアスファルトがはぎ取られている。 気候変動、健康に「影響与えていると実感」78% 医師1100人に調査
あちこちで寸断された道路の端に集まった住民たちが「誰かロープで助けろ!」と大声を上げた。 彼らが指さす方向を見ると、数百メートル向こうに、水に漬かる車両から逃れて柱にしがみつく運転手の姿がわずかに見えた。 首都ナイロビから約7時間。車に揺られてきたが、水害の広がるスピードは想像を超えて速かった。「すみませんそっちに行けないので引き返します。道が無くなっていて…」。取材協力者におわびの電話を入れる、ケニア人の同僚の声が聞こえた。 この場面だけ見れば一地域の大雨被害と思われるかもしれない。しかし、ここから北西に約400キロ、東京―大阪間ほどしか離れていないエリアでは、前年のこの時期は干ばつに見舞われていた。しかも、国連が「過去40年間で最悪」と評したほどのひどさ。ケニア・ソマリア・エチオピアの国境が接する一帯は23年前半まで苦しんだ。 それが一転して、その年の後半からは水害が多発している。ロイター通信は、ソマリアでは70万人以上が洪水で家を追われたと報じた。
地球各地で見られる気候変動。アフリカでは近年、異常気象による災害が顕在化。乏しい資源を奪い合って紛争が増えるという「最悪のシナリオ」も危ぐされている。現地では何が起きているのか。(共同通信=菊池太典) ※記者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽ウクライナ侵攻の裏で進む食料危機 ロシアのウクライナへの全面侵攻開始が世界の目を集めていた2022年2月下旬、ケニア北部マルサビット郡には深刻な食料危機が直撃していた。 「食べ物がほしい」 車を走らせると、やせ細った子どもたちが訴えかけてくる。文字通り「不毛の大地」に、衰弱して息絶えた家畜の死骸が散在していた。 ケニアの「国家干ばつ管理機関」でマルサビットを担当するマモ・イサコさん(29)は恨めしそうに空をにらんだ。 「最後に雨が降ったのは昨年4月です」 家畜をはぐくむ緑はうせ、乾いた黄土色の砂地がかなたの山裾まで続いていた。