アフリカの異常気象による「最悪のシナリオ」が現実に… 気候変動→資源減少→紛争増加 日本も他人事ではいられない
同行した栄養士がある集落を訪れ、子どもの栄養状態を検査するために巻き尺で二の腕の太さを調べた。1歳にならないナオミ・サンチルちゃんは重度の栄養不良を表す「赤ラベル」の判定を受けた。ナオミちゃんは7月生まれ。最後の雨が降ってからこの世に誕生し、それからずっと、食料難の環境で生きてきた。 干ばつでも、地下水をくみ上げたり雨が豊富な遠方から輸送したりして、マルサビットの住民は渇きから逃れていた。だが、飢えは深刻だ。集落の副首長アンドリュー・レマロさん(34)は、食料危機が起きるメカニズムをこう説明する。 「集落の住民のほとんどは放牧をなりわいとしてきましたが、干ばつで牛やヤギ、ラクダといった家畜の餌となる植物が集落の周辺に生えなくなりました。家畜を避難させるため、集落の男たちはまだ植生がある100キロ以上離れた餌場まで家畜を連れて行ったきり、半年近く戻りません。集落に家畜がいなくなった結果、女性や子どもの栄養源となるミルクや肉が手に入らなくなったのです」
▽気温上昇が多様な被害に 気候変動は、国連によると1800年以降は主に人間活動によって引き起こされた。化石燃料(石炭、石油、ガスなど)の燃焼によって温室効果ガスが発生し、気温が上昇する「地球温暖化」が問題視されている。 気温上昇によってもたらされる被害は多様だ。国連はまずこう説明する。 「気温が高い状態が長期化すると、気候のパターンが変化し、通常の自然界のバランスが崩れる」 その上で、世界的に嵐や干ばつの被害が増えていると指摘する。 気候変動の影響は日本も含め世界に及ぶが、堤防やかんがい設備といったインフラの乏しいアフリカは異常気象への耐性が弱く、被害がより甚大になることが予想されてきた。 2023年にはアフリカ各地で大規模な水害が発生。2~3月には、1カ月以上にわたり勢力を保ったサイクロンが南部のマラウイやマダガスカル、モザンビークを直撃。多数の死者が出た。北部リビアでも9月に大規模洪水で約4千人が死亡している。