中村魁春『伊勢音頭恋寝刃』仲居万野 好きな男をとことんいじめる女【今月の歌舞伎座、あの人に直撃!! 特集より】
毎月歌舞伎座公演で上演される演目のなかから、気になる場面やせりふ、キャラクター、衣装などをピックアップ。客席からは知る事のできないあれこれを、実際に演じる役者に直撃質問! これを読めばきっと生の舞台を体感したくなるはず。 さぁ、めくるめく歌舞伎の世界へようこそ。(「ぴあ」アプリ&WEB「ゆけ!ゆけ!歌舞伎“深ボリ”隊!!」今月の歌舞伎座、あの人に直撃!! 特集より転載) 【全ての写真】中村魁春さん最新舞台写真ほか 歌舞伎の女方の役の中にはダーティな悪女や毒婦の役も少なくない。時代狂言なら『伽羅先代萩』の八汐や『加賀見山旧錦絵』の岩藤、世話狂言なら『於染久松色読販』の土手のお六や『盟三五大切』の妲妃の小万などなど。 中でもトップクラスで意地の悪い女といえば、「三月大歌舞伎」の夜の部で上演中の『伊勢音頭恋寝刃』の仲居万野だ。主人公の福岡貢をとことん邪険に扱う。貢は万野にずっとむかむかさせられ、満座の中でも恥をかかされ、ついにその怒りを爆発させる。 <あらすじ> 伊勢神宮の神職である御師の福岡貢は、かつての主筋今田万次郎が紛失した名刀「青江下坂」とその折紙(鑑定書)の詮議に奔走している。やっとのことで青江下坂の刀を手にして伊勢の古市の茶屋油屋へ赴くが、万次郎とは行き違い、仲居の万野からは散々嫌がらせをされ、なじみの遊女お紺からも愛想尽かしされ、貢はついに妖刀・青江下坂で次々に人を斬ってしまう。 弁の立つ万野と応戦する貢。テンポ良くリアルなふたりのやりとりはもはや現代の対話劇のよう。そしてこの万野、一見地味な仲居にすぎないのだが、『伊勢音頭』という狂言のクライマックスを盛り上げる重要な役どころだ。 今月この万野を勤めるのは中村魁春さん。2015年に国立劇場で勤めて以来2度目となる。なぜこうも執拗に貢をいじめるのか。いじめ方にはどんなこだわりがあるのか。稽古が始まったばかりの魁春さんを直撃してたっぷりとお話をうかがった。