バレーボール最速昇格成し遂げた“SVリーグの異端児”。旭川初のプロスポーツチーム・ヴォレアス北海道の挑戦
揺るぎない2つのコンセプト。サッカー、ハンドボールも参考に
――ヴォレアスの創設時からこだわるチームコンセプトについてお聞かせいただけますか? 池田:2016年の10月に設立会見をした際、「どんなチームにしたいですか?」という記者さんの質問に対して、2つのコンセプトを伝えました。「最短で日本一を目指します」ということと、「とにかく、“かっこいい”チームにします」ということです。言い方は悪いですけど、田舎のチームが立ち上がって、当たり前のことをやって「いつか強くなったらいい」というスタンスだと、出口のないトンネルみたいな感じで、いつまでも浮上できないと思うんです。だからこそ、「このチームは何かが違うよね」とか、「何かを変えてくれるかもしれない」という期待感と可能性を示し続けて、最短で勢いよくトップリーグに上がろうと決めて進んできました。もう一つの「かっこいい」というのは、ブランディングやクリエイティブを含めて「プロバレーボールチームとして憧れられる存在になりたい」という意味を込めました。 ――「かっこいい」という点では、どのような形で他のクラブとの差別化を図ってきたのですか? 池田:男子だとおそらく私たちが最初のプロチームで、スポンサーやチケット収入が財源になるモデルなので、魅力あるチームにしなければいけません。また、Vリーグのチームとしてはかなり後発なので、圧倒的に他と違うところを見せる必要があります。そのために、グローバルな視点であらゆるプロスポーツチームを参考にしました。1年目にヨーロッパに行ってドルトムントのサッカーを見て、ケルンではハンドボールのチャンピオンズリーグ決勝で2万人入った試合を見ました。アメリカではNBAやブロードウェイのミュージカルも視察しました。そういったアリーナ競技やエンタメのトップレベルを全部見て方向性を確認し、洗練されたクリエイティブの多さや企業のブランディングの力を感じたんです。その中で、投資すべきところはしっかり投資して、試行錯誤しながら進んできました。 ――日本のバレーボールは、選手個々が人気を獲得して注目を高めてきた部分もありますよね。 池田:そうですね。ただ、私が思う「かっこいい」は、パーソナルの「かっこいい」ではなく、チーム全体のかっこよさです。選手推しにすれば、人も来てくれるしグッズも売れるので、運営面では楽なのですが、選手の引退や移籍がある以上、そこに依存すると短期で終わりますし、チームとしてはやっぱり不健全だと思います。私たちはどれだけヴォレアスというチームを応援してくれる人を増やすか、いわゆる“箱推し”を広げることをテーマにしているので、会社の思いとか取り組みとか、そういった面を伝えることを一生懸命にやっています。 ――取り組みの成果を実感するのはどんな時ですか? 池田:チームを応援してくださる方が増えたことです。男子の代表だと、観客層はおそらく9対1くらいで女性が多いと思いますし、他のチームもそこまで大きく変わらないと思いますが、うちは6:4から7:3で、男性が多い状況です。地域のチームとして応援してくださる方やファミリー層が多く、個人推しというよりは箱推しで、地元のチームとして応援してくれる方々や、チームのフィロソフィーやコンセプトに共感してくれている人が増えているということだと思います。