『ガンダム』最新作で主人公役を演じる黒沢ともよ、キャラソンと共に振り返る表現力の高さ
『響け!ユーフォニアム』、『呪術廻戦』など話題作にも出演
黒沢が主人公・黄前久美子を演じるアニメ『響け!ユーフォニアム』(TOKYO MXほか)シリーズも、彼女を語る上では外せない作品だ。高校の吹奏楽部を扱った青春アニメである本作のED主題歌は、北宇治カルテットというキャラクター4人組ユニットが担当しており、なかでも最終章となった2024年放送の第3期EDテーマ「音色の彼方」では、作中の久美子のナチュラルな演技をそのままボーカルに落とし込んだ歌唱が特徴的だ。また、他にも歌唱面で印象的なのが、サビで披露される4人の綺麗なファルセット。複数人で歌われるキャラクターソングは、歌唱レンジをある程度狭くすることが多いが、この楽曲はサビ頭の〈忘れない〉の部分など、一気に音程が高くなるパートがいくつも存在する。作曲者が黒沢をはじめとした役者陣を信頼しているからこそ書けたフレーズであり、それは第1期、第2期からの積み重ねの結果でもある。シリーズのラストを飾るに相応しい感動的な1曲だ。 アニメ『呪術廻戦』(MBS/TBS系)の作中アイドル・高田ちゃんとして歌唱した「最高潮☆JUMPING!」は、原作読者すらも予想外な場面でこの曲が挿入歌として使用されたこともあり、放送当時は喝采とどよめきと笑いが同時に起きたのも記憶に新しい。楽曲としては良い意味でメロディに癖がないアイドルソングとなっており、高田ちゃんの澄み切った歌声と、ハッと耳を奪われるようなセリフ調のイントネーションからも王道感が滲み出ている。そして何と言っても、この曲の一番の盛り上がりはラスサビ前の高田ちゃんのキメ台詞〈「たんたかたーん!」〉で間違いないだろう。作中ではほぼ出番がない彼女だが、この1曲だけで解像度が上がってしまうのだから楽曲の力、そして歌声の力は凄いものである。 個人的に推しておきたいのが、黒沢が風の妖精・シルフィーを演じた2014年放送のアニメ『甘城ブリリアントパーク』(TBS系)のキャラクターソングである。彼女の歌うソロ曲「読まぬ空気のカラザンヨウ!」は、何度も聴きたくなってしまう中毒性の高いポップロックナンバーで、空気を読まないシルフィーのフリーダムな雰囲気を味わえる山下メーコによる歌詞と、それを表情豊かに歌い上げる黒沢のコミカルでキュートな歌声の相性が抜群だ。また、ベーシストのIKUOが手掛けた聴き応えのある本格的なサウンドなど、聴くたびに発見がある名曲である。ちなみに黒沢がLikoとして歌唱したアニメ『アクティヴレイド -機動強襲室第八係- 2nd』(TOKYO MXほか)EDテーマ「Field Trip!!」で、この曲の作詞・作曲コンビと再び邂逅している。こちらも合わせて押さえておきたい。 最後に紹介するのは、スマートフォン向けRPG『アークナイツ』の3周年記念楽曲「長い夜は明ける」。『アークナイツ』のシリアスなストーリーを思い出させる歌詞の数々に、涙腺が緩んだドクター(プレイヤー)たちも多いことだろう。そんな重厚な世界観を歌うのは、黒沢が演じるメインヒロインの少女・アーミヤ。ふんわり優しく始まった歌声が、曲が進むにつれてどんどん力強くなっていく様子や、歌声だけでなく息遣いまで含めてアーミヤの感情を色濃く繊細に表現する彼女のテクニックも相まって、1曲聴き終えた後は壮大なドラマを見終わったかのような充足感に包まれるはずだ。 キャラクターによってガラリと変わる声の表情と抑揚、そして的確にキャラクターを演じ切る歌唱力と表現力。彼女の歌うキャラクターソングを聴くと、確かな実力が土台にあるからこそ、様々な表現に挑戦できるのだと再認識できる。アニメや舞台の演技だけでなく、今後も彼女の歌声にも注目してもらいたい。
河瀬タツヤ