習近平氏が公明山口代表に会わないのは「重視していない」というメッセージ
処理水について「中国独自のモニタリング」を進めるのであれば、日中首脳会談時のスタンスと異なり二重外交に見える
峯村)私が最大の問題だと思ったのは、王毅氏との会談です。中国側が処理水について「中国が独自にモニタリングできる機会をつくって欲しい」と求めた。それに対し、山口代表は「政府間で調整して早急に詰めていくことを期待したい」と言ったとようです。 飯田)中国側の要求に対して。 峯村)これは、少なくとも前回の日中首脳会談のスタンスと違うわけです。日中首脳会談のときも、「国際原子力機関(IAEA)がしっかり認めているのだから」と突っぱねているのです。しかし、山口氏のこのやり取りは、中国側による独自のモニタリングを検討する、というニュアンスがあります。これはまさに二重外交と弊害で、そんなことを言わない方がいいですし、行く必要もなかったのではないかと思います。
IAEAの存在を否定し、国際機関を軽視するような流れになりかねない ~山口氏は否定するべき
峯村)中国としては「独自の調査」という理論を示し、国際機関であるIAEAの評価すら否定しているわけです。日本は法の秩序や民主主義を掲げ、IAEAなどの国際機関を重視しています。今回、中国の主張を受け入れることは、IAEAの存在を否定したり、ひいては国際機関などを軽視したりするような流れにつながりかねません。ここは1ミリたりとも譲ってはいけないラインであり、曖昧な対応をすべきではありません。 飯田)岸田政権はじめ、これまで言ってきた法の支配などを、すべて自分たちがひっくり返してしまうことになりますよね。 峯村)今回も王毅さんが、そもそもIAEAの枠組みは「有効な国際モニタリングではない」と言っているわけです。これに対して山口氏はそれに反論して突っ込まなければいけません。「何が有効ではないのか言ってください。この調査団のなかには中国の代表もいますよね」と。 飯田)IAEAの調査団のなかには中国の専門家も入っていました。 峯村)そうです。「何が問題なんだ」と、王毅氏に対してきっちり反孫すべきです。私は、処理水の問題は放っておけばいいと思うのです。 飯田)こちらは粛々と動いていけばいい。 峯村)中国側は非科学的な言いがかりをつけているのだから、そんなものは突っぱねればいい。日本側の影響に関して各省に聞きましたが、何か実害が出ていたり、漁業の方から陳情や抗議がきたりしているといった報告は全くないそうです。 飯田)処理水放出によって。 峯村)国内需要がうまく戻ってきたこともありますし、先日は在日米軍が日本産ホタテの買い取りを始める方針が打ち出されました。また、日本大使館がアメリカ議会下院の中国特別委員会のギャラガーさんたちに、日本産の寿司をふるまいました。握っていたのは、私の行きつけのワシントンのお寿司屋さんだったのです。その結果、アメリカではまた日本産海産物が人気になっているらしいです。 飯田)大ウケだったとのことです。 峯村)現地のアメリカメディアも報じていました。日本産海産物の安全性をアピールする目的は達成したでしょう。