「ロシア系住民も、『解放』なんて望んでいない」...ジャーナリストがウクライナ国境で目にした、残酷すぎる「侵攻の現実」
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第14回 『「あの男に見覚えがある」...当局に追われるジャーナリストが経験した、ヤバすぎる「身の危険」』より続く
戦火の広がるウクライナ
翌朝、クルマに乗り、ウクライナ国境へ向かった。ピーターは集中してナビを見ていた。わたしは携帯のニュースをスクロールしていた。後部座席に座った2人の同僚はドイツ語で何か話していた。 道の両側を畑と、ポツンと見える村々が過ぎて行った。モルドヴァはヨーロッパの最貧国とされている。行く手を牛の群れが横切っていた。わたしたちは牛が反対側に渡りきるのをじっと待った。 「そうだ、トランスニストリアで爆発があったのは見ましたか?」ピーターがきいた。「どうやらロシアは第2戦線を開きたいようです」 「ええ、見ました。ここからトランスニストリアとの境界まではどのくらい?」 「クルマで一時間ほどです。でもあっちには行けません。あそこの飛び地はロシアの管轄下ですから」 「そうね。あなたはイギリス人だから間違いなく捕虜にされるわね」 「あなたも逮捕されますよ」 「トランスニストリアでも逮捕か。ロシアでも逮捕されるし、ウクライナには入れてもらえないし。ねえ、あなたたちはわたしの代わりにキーウに行ってくれる?」冗談で『ヴェルト』の仲間にきいた。
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