銀行登録印はどれだ? 見つかった印鑑は8本、母(79)は「覚えていない」と言う…親の介護で遭遇した“資産管理問題”を乗り越えた方法は
本人の協力がないと代理人カードも家族信託も使えない
あと7本のうちのどれかが正解なのだろうが、失敗を繰り返したら銀行側が不審に思っても不思議ではない。老健からの自動引き落としに関しての書類不備なら、親族の誰かが本人に無断で手続きを進めている、あるいは、本人が認知症を患うなどして判断能力が低下しているのではと思われるかもしれない。すると最悪の場合、本人の財産を守るために口座が凍結される可能性がある。 この口座は母宅の家賃や電気ガス水道代の引き落とし先であり、年金の入金先でもある。凍結されたら年金も使えなくなるし、ライフラインの支払いも滞る。本人のために動いているのに、本人の生活が詰んでしまう。すると、いよいよこちらの財布を開かないといけなくなるかもしれない。成年後見制度を家庭裁判所に申請する手もあるが、士業が後見人に指定される母が死ぬまで毎月の費用が発生するし、家族が指定されても煩瑣な手続きが課せられることになる。いずれにしても、大変な重荷を背負うことになる。 背筋が凍ったが、母に尋ねてもやはり「いろいろありすぎて覚えていない」という。うーん。 とはいえ、2040年には7人の高齢者のうち1人が認知症を患うと厚労省が推計を出している昨今、銀行側もこうした事態を想定していないわけがない。 実際のところ、多くの金融機関は本人に代行して一定範囲の金融取引をするための「代理人カード」制度を提供している。しかし、大抵は同一世帯の親族にしか発行されないし、発行するためには本人が窓口に足を運ぶ必要がある。また、いざというときの備えとしては家族と資産を共有する「家族信託」という仕組みも普及しているが、やはり本人が窓口に向かう必要がある。 結局のところ、家族があくせくしたところで、本人が万が一に備えようと思っていなければこれらの事前対策は選べないのだ。本人の財産なんだから当然といえば当然だ。 金融機関が用意する制度が使えないのであれば、現実的なのは銀行カードや印鑑を預かって、必要な金額を金融機関から引き落とす方法になる。しかし、その印鑑がどれか分からない状況なのだ(ちなみに、この時点では暗証番号も分かっていなかった)。 いずれにしても、本人の協力が得られないとお金のやりくりを代行するのは相当困難になる。
【関連記事】
- 【最初から読む】「会話が絶え絶えになるほど」歯が痛くても半年以上放置、1Kの部屋はゴミ屋敷レベルに…要介護の母(72)の家に足を運ばなくなったワケ
- 息子の名前が違う“怪しすぎる遺言書”、認知症の父の財産を兄嫁が使い込み...本当にあった「映画のような相続トラブル」
- 《追悼》「お前すっかりドラえもんになっちゃってるよ」大山のぶ代と夫・砂川啓介の夫婦ゲンカが46歳でピタッとやんだ“特殊すぎる理由”
- 誤動作を起こして事故を起こしてしまう可能性もある…それでも日本がAI制御の自動車を積極的に開発すべき“納得の理由”
- トラックドライバー歴30年、怒りっぽい77歳の夫に悩んでいた妻を救った「あるお医者さんのアドバイス」