仏経済学者ピケティ氏、日本や世界の格差拡大を語る 「累進税で再分配を」
フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏が来日し、30日に東京の日仏会館で講演を行った。京都大学の橘木俊詔(たちばなき・としあき)名誉教授とともに、世界で格差が拡大している現状、それを再分配して解決するための方法について議論した。
ピケティ氏は、米国や欧州の事例を歴史的に振り返り、例えば米国では「現在は1920年代よりも富の集中が高い水準で、4%の人に集中している」と、一部の富裕層に富が集中する傾向がより強まっていると分析。こうした「格差」はレーガン以降の米国では特に加速しているという。欧州でも格差は拡大しているが米国ほどではなく、日本の格差はこの米国と欧州の間くらいになると語った。 橘木氏も、先進国で貧困率が一番高いのは17%の米国で、2番目は日本とのデータを示し、「日本は世界2番目の貧困大国。15%の人が貧困にあえいでいる不平等な国」と語った。ちなみにフランスは7%程度と低い水準になっている。 ピケティ氏は、累進税を強化して再分配を進めるべきだと主張する。「いろいろな方法で再分配はできるが、やはり累進的な税制度ではないかと思っている。同時に格差はどう生まれるか。観察結果にそれを合わせる」。 具体的には、「所得の高いトップグループが年6、7%くらいで成長しているならどういう税制が必要か。逆にトップが1、2%しか伸びていなければ、経済成長率と同程度なのでそれほど累進的な課税でなくてもいい。だからこそ透明性が必要」と、格差の状況に合わせて政策を実行していくべきだと説明した。
日本が、北欧のような福祉国家を目指して消費税率を25~30%にしていくことには「それで解決されるわけではない」と否定的で、日本の税制は「世代間のリバランスをすること」が大事だと指摘する。「若い世代は相続資産がない。労働所得がなく賃金も上がらない。財産形成をすることが出来ない」からで、若い世代、低中所得者の税率を下げ、トップの所得の税率を上げるべきだという。 ピケティ氏が提唱している「グローバル資本課税」については、「実現可能性はもちろんある」としながら、「国レベルでもできることがある。財産、富への課税はどこでもやっている」と指摘。「不動産には財産税がかけられるが、なぜ金融資産にはかけられないのか。税金は数百年以上前に導入されたが、その当時は資産は不動産だった。それが理由。それを変えてこなかった」と語り、21世紀の実情に合った税制が必要だと提言した。