「タクシー代1万円を受け取るたび、心がすり減る…」“港区女子”になれない女の歪んだ欲望|STORY
「港区女子」。それは何かと世間の好奇心を煽る存在。 彼女たちは一体どんな女性なのか? そんな議論が度々上がるけれど、港区で暗躍する素人美女、パパ活女子、あるいはラウンジ嬢など…「港区女子」の意味合いや捉え方は人それぞれ。 そして謎に包まれた彼女たちにも時間は平等、歳をとる。港区女子たちは、一体どんな着地をしているのだろうか。現在アラフォーとなっていると思しき元港区女子たちの過去と現在に迫る。 ※この物語は実際の出来事を元にしたフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
【茜の過去】「港区女子」になりきれない
朝美や由利のような派手な女の子たちとつるんで遊ぶのは、間違いなく楽しい。 私はたまたま街で声をかけられた読者モデルのスナップ撮影で由利に出会い、その可憐さに一瞬にして目を奪われたのが始まりだ。憧れの女性誌の撮影で緊張していた私に、すでに場慣れした由利は気さくに接してくれた。 以来、私は彼女と仲良くなり、プライベートの生活の質は格段に上がったのだ。 まるでテレビドラマや漫画に登場するような煌びやかな都会の生活。昔から東京の生活に憧れはあったものの、ただの学生の身分で星付きのフレンチの店や老舗の鮨屋に出入りしたり、芸能人の隣で日常的にカラオケができるなんて夢にも思わなかった。 当初は映画でも観るような気持ちで、ただ圧巻の世界に感心するばかりだった。でも私は徐々に違和感を持つようになった。 「ここの大金の支払いは誰がしてる?」 「どうしていつもタダでいいの?」 「彼らの目的は?」 「いつか危険な目に遭うんじゃないか?」 考えなければ、ただその場を楽しんで身を任せていれば、それでいいのかもしれない。でも私は、どうしても舞台裏が気になってしまう。こんな生活が成り立つなんて、どこかおかしい。 毎度タクシー代と称して渡される1万円札。たぶん、誰かのお財布が痛むことなんてない。なのに、受け取るたびに心がすり減るような気がするのはなぜだろう。