走行中の車内は灼熱! うるさすぎて会話するのにレシーバー! ジャガーXJR-15は公道を走れるようにしただけのレーシングカーだった
ミッドに搭載された6リッターV12は450馬力を発生
1990年末にはXJR-15のプロトタイプが出現するようになるのに前後して、TWRはその生産台数を50台と発表。XJR-15のプロジェクトは計画どおり始動した。 XJR-15に使用されたシャシーは、XJR-9と完全に共通ともいえるカーボンとケブラーのコンポジット素材からなるモノコックだ。現在では多くのスーパーカーがそれを用いるが、当時このタイプのモノコックをもつモデルは希少で、それは時系列ではマクラーレンF1よりも早い。 搭載エンジンもXJR-9用をベースとした6リッターのV型12気筒SOHC。最高出力は450馬力に抑えられていたが、それでも車重が1050kgと軽量であったため、0-100km/h加速のデータはわずかに3.2秒。のちに誕生するXJ220の同データが4秒であったことを考えると、それは比較にならないほどに早い数字ということになる。 ジャガーとしては搭載エンジンを、V型12気筒ではなく507馬力を発揮する3.5リッターのV型6気筒ツインターボエンジンを搭載することを選択したXJ220のほうを、ジャガーのフラッグシップスポーツとして位置づけたかった思惑があったのだが、運動性能のアドバンテージがスーパースポーツの世界においては絶対的なものであるのはいうまでもないところ。 結局XJR-15はXJ220の販売に、少なからずマイナスの影響を与えるに至ってしまったのだ。 オンロードを走行するための保安部品やライセンスプレートを取り付けただけのグループCカーとも表現することができるXJR-15は、何もかもがスパルタンなスーパースポーツだった。走行中にはキャビンは水温の上昇から灼熱の世界へと変わり、パッセンジャーとの会話を行うには標準装備されるヘッドフォンタイプのレシーバーが必要不可欠だ。 サスペンションは独立懸架で、全モデルがビルシュタインの非調整式ダンパーを採用。さらにエンジンはリヤフレームの応力メンバーとなるから、走行中にドライバーが感じる乗り心地は、まさにレーシングカーそのものといった印象だ。 わずか53台がTWRスペシャルビークル・オペレーションズの手によって製作されたXJR-15。それは現在でもマニアの目を刺激して止まない。
山崎元裕