真央と宮原。世代交代したのか。
表彰台の真ん中にいたのが、17歳の宮原知子で、25歳の浅田真央は脇役に回った。グランプリシリーズのNHK杯の女子シングルは、SPでトップに立っていた宮原知子がフリーもほぼノーミスでまとめて「目標にしていた」という200点を突破してGPシリーズで初優勝。一方、SPでトリプルアクセルに失敗、4位発進となった浅田は、フリーでもミスを続け、計182.99点で3位となった。真央は、1年ぶりに復帰してGPシリーズは2戦目。先の中国杯では見事に優勝を飾ったが、まるで別人だった。 「体にキレがなく、体が重そうでした。スケーティングの乗りも悪かったですね。トリプルアクセルは勢いが足りず、踏み切りに躊躇したため、跳び上がりきれずに回転不足となって失敗しました。その影響から続くトリプルフリップからトリプルループのコンビネーションジャンプもダブルループになってしまいました。 後半のコンビネーションジャンプでは転倒しましたが、おそらく前半のミスのリカバリーをしようとトリプル、トリプルを試みたのだと思います。でも、二つ目のジャンプを跳び急いだため上半身が先に左側へ流れてしまいました。これは跳び急ぐことで起きる典型的なミスです。 国内での本格復帰でのプレッシャー、中国杯の出来が良かったために、考えすぎたのかもしれません。ただ、ジャンプの出来や調子に波があるのが、浅田真央選手がこれまでも抱えていた課題でした」 そう指摘するのが、元全日本4位で、フィギュアに関する著書もある現在インストラクターの今川知子さんだ。真央自身も、「自分の思っているような演技はできなかった。気持ちと動きが一致せずにチグハグだった」と反省していた。1年のブランクは、「滑りたい」というアスリートにとって最も大切なモチベーションを高めたが、一方で、フィジカルやスタミナも含め、ブランクを埋める作業は簡単ではない。年齢に伴うフィジカルの変化で、よりメンタルと肉体のバランスを保つこともむずかしくなっている。ルッツジャンプのエッジ修正など、技術面での課題にも取り組んでいるが、緊張とプレッシャーを受ける試合になると昔の悪い癖が出る。 真央がいない昨年の全日本で新女王となっていた宮原は、フリーでは、冒頭のコンビネーションジャンプで少しぐらつき、フライングキャメルスピンでバランスを崩しそうになったが、ジャンプはほぼノーミス。真央との直接対決で勝ったのは初だ。 前述の今川さんは、「回転力のあるジャンプの安定力が宮原さんの強さ。トリプル、トリプルも回転不足をとられることなくクリアしています。加えて昨年あたりから、表現力を身に付けてきました。小さな体が大きく見え、リンクで映えるようになってきました。5コンポーネンツの得点も、浅田選手と0.18点差しかありませんでした。ステップ、エッジワークも進歩していますし、つなぎに荒さが目立たない部分も成長点です」と、分析した。演技構成点は、宮原が65.88で浅田が66.06。宮原が浅田になかなか追いつけなかった分野でも肉薄した。