全国のヤギ農家、宮古島で「サミット」 戦後・沖縄の食糧難救った「命の薬」 食文化学ぶ
【宮古島】全国各地のヤギ農家が集まり、ヤギの魅力や可能性などを共有する「第24回全国山羊サミット沖縄島大会~山羊肉の食文化~」が16、17の両日、宮古島市平良のJTAドーム宮古島で開催された。琉球大学名誉教授の砂川勝徳さんによる基調講演では、県内のヤギ肉食文化の移り変わりや大型ヤギの生産技術などについて説明した。同大会の開催は県内では初めて。 【動画】“赤ちゃんがいっぱい” 出産ラッシュで大にぎわい 「ヤギは生きがい」
砂川名誉教授によると、終戦後、食糧難の時代を迎えた県内では、衛生環境が悪く、多くの県民が感染病にかかり、妊婦の栄養状況が悪く、乳幼児の生存率も悪かったという。当時のやぎ汁は「ヌチグスイ(命の薬)」と重宝された。 日本に復帰した1972年ごろ、県民の食生活は改善されてきたが、ヤギは最高のごちそうで節目の日に食された。80年代には供給が追いつかず、県外、国外からヤギ肉を輸入した。 90年代になると、「ヤギ肉料理を食べると血圧が上昇する」という風評被害が広がり、消費が低下し、飼養頭数が減少した。砂川名誉教授らが血圧上昇の要因がヤギ肉にあるかどうかを研究した。ネズミを用いた研究で、ヤギ肉には血圧上昇の要因はなく、料理に用いる過剰な塩分が原因だったことが分かった。また、フーチバー(ヨモギ)が血圧の上昇を抑制することも分かった。 この研究結果は2014年に公表され、ヤギ肉の消費が回復し、現在でも需要は拡大している。砂川名誉教授は「戦後の食糧難では、ヤギ肉が人々の命を救った」「伝統的なヤギの食文化は時代の変遷に影響されながらも受け継がれてきた」と説明した。
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