「青春18きっぷ」はもう役目を終えた? “自由”を奪うルール変更、JRの事情は分かるが「独自の魅力」はどこへ行く
利用者に招く疑心暗鬼
前稿へのコメントのなかには、新幹線開業にともなう在来線の分離やローカル線の廃止が相次ぎ、 「鉄道旅行が難しくなっている現状があり、青春18きっぷの需要自体が減少している」 「既に役割を終えている」 といった指摘もあった。しかし、これは事実ではない。 11月12日の毎日新聞の報道によれば、2023年度の販売枚数は約62万枚という。筆者が取材した限りでも、十数年前から60万~70万枚台をキープしており、多少の増減はあっても売れ続けており、決して需要が減少しているわけではない。 やはり問題は、こうした 「ユーザーの使い方」 にある。JR側は今回のルール変更について、「(連続した日程で)連続乗車するニーズが多い」としているが、実態は定かでない。これまで青春18きっぷを発券すると、乗車日や乗車区間などを問う任意のアンケート用紙が付属し、利用傾向を詳細に把握しているはずだが、JRはその結果を公開していない。これまで何年にもわたり、多くの利用者にアンケートへの協力を求めてきた以上、その結果が今回のルール変更に反映されているのかどうか、JR側からの反応があってもいい。 もちろん、利用者の「できるだけ安く、できるだけ便利に」といった欲求は、無制限に実現されるものではない。「『青春18きっぷ』で特急に乗りたい」といっても、それは商品のコンセプトからいっても無理な話だ。一方で、ユーザーのなかには、JR側の事情をよくわきまえた人も多い。寄せられたコメントには、次のように事情をくんだものも目立った。 「鉄道会社は経済的余裕を失っている」 「鉄道会社としては(普通列車から)特急など有料の列車に誘導したい」 「利用者のマナーが悪く、JRは『青春18きっぷ』をやめたがっている」 「不満はあるが、時代に合わせた変化だと受け入れるべきだ」 といった意見だ。ネット上では従来のルールに戻すようオンライン署名が展開され、3万筆以上の賛同が集まったが、それも強硬な反対姿勢というより、JRの事情も踏まえた上で、少しでも魅力的に改善ができないか、といった趣旨だ。 JRの理解者は多い。そして、こうした人々が心配するのは、今回のルール変更を機に青春18きっぷが自然消滅へと向かい、ひいては長年の熱心な鉄道利用者さえ離反してしまう未来だ。 筆者の記事にも「(新ルールで使いにくくなることで)『青春18きっぷ』の販売が減少し、それを理由に廃止されるのが心配だ」といった意見が多く寄せられた。利用者にとって今回のルール変更は、 「利用者のニーズが本当に反映されているのか」 「将来にわたる持続的なサービスが期待できるのか」 が明確でなく、疑心暗鬼になっている様子がうかがえる。消費者への説明責任は、サービス提供者にとって重要な責務のひとつではないか。