柴咲コウのいてつくまなざし、不穏に動くルンバ......『蛇の道』黒沢清監督「面白い映画とは怖い映画である」
わが子を殺された親が徹底的に復讐する――今や世界的な人気を誇る黒沢清監督による『蛇の道』(1998年)が、二十余年の時を経てまさかのセルフリメイク! 【画像】柴咲コウのいてつくまなざし……怖すぎる! 舞台は日本からフランスへ、そして主人公は男性(哀川翔)から女性(柴咲コウ)へと変わり、旧作をしのぐ怖さのリベンジ・サスペンスへと生まれ変わった! なぜ今セルフリメイクなのか? そして、なんでこんなに怖いのか? 監督本人に聞いてみた! ■自作をフランスでリメイクした理由 ――黒沢監督といえば、サスペンスやホラー映画の名作を数々手がけたことで有名です。しかし、新作『蛇の道』は監督の過去作と比べても、とんでもなく怖い映画でした。黒沢 ありがとうございます。 スタッフもキャストも最大限の力を発揮してくれたからできた映画だと思います。特に主演の柴咲コウさんが怖いですよね。あれだけ怖く演じてくれるとは期待以上でした。 ――劇中のセリフでも「蛇のような目をした女だ」と言われますが、まさにいてつくようなまなざしでした。 黒沢 あれは柴咲さんの演技力のたまものですね。フランス人もぎょっとするような目をしていました。 ――今作は1998年公開の同名タイトルを、フランスを舞台に監督自らリメイクした異色作です。企画の経緯は? 黒沢 5年ほど前にフランスの映画プロダクションから、僕の過去作でリメイクしたいものはあるかというオファーが突然ありまして。ほとんど即答で、「それなら『蛇の道』をやりたい」と答えました。あれは友人の高橋洋という脚本家が作った物語ですが、当時から非常によくできていると感じていて。 わが子を殺された親が徹底的に復讐していく話で、この設定は国や時代を超えて通用する。しかし、98年版はVシネマだったこともあり、広く見られたわけではなかった。 あの力強い物語を埋もれさせてしまうのはもったいないと以前から思っていたので、この機会にぜひとお願いしたら、フランスでのリメイクが実現してしまったわけです。 ――98年版からの大きな変更点として、今作は主人公・新島の性別が男性から女性へと変えられています。 黒沢 セルフリメイクとはいえ、舞台を日本からフランスに移すだけでは新たに脚本を書くための取っかかりがないと思ったんです。 それで女性主人公に変えてみたのですが、このシンプルな変更によって、結果的に98年版とは似て非なる映画になりました。というのも、前作は哀川翔さんと香川照之さんの男性ふたり組が中心だったんですね。