IRと観光資源の連動で地域振興を 大阪商業大学・美原融教授
カジノ合法化の前にギャンブル依存対策基本法を制定か
──ギャンブル依存症問題が懸念されているが。 「IRが誕生するまで数年かかる半面、ギャンブル依存は今すぐ取り組むべき課題だ。IR法制とは切り離して、ギャンブル依存対策基本法といった法律を別途作り、早期に対応する方向へ向かうのではないか。パチンコや競馬などを含めて、これまでギャンブル依存が表立って議論されることは少なかったが、新しい法律で依存症への国民の関心が高まることはいいことだ」 ──カジノ合法化で新たな依存症を生み出すのでは。 「依存症の人にはギャンブル会場に入れない、ギャンブルをさせない、お金を貸さないなどの措置が有効だが、これまではなされたことがなかった。カジノは入場規制を導入できる。依存症の当事者や家族が入れないでくださいと申請したり、医師があなたはやめさないと判断した場合、顔認証システムでチェックすれば、入場できない」 「ギャンブルによって依存症のリスクが異なることを、総合的に研究して対策を講ずるべきだ。医療機関などが依存症の人をもっと受け入れやすい環境を整え、社会全体でケアする仕組みが求められる。先の国会審議ではIR事業者が納める交付金の一部を、依存症対策に充当すべきではないかという主張があった。今後の検討課題だろう」 ──昨春開設された大阪商業大学大学院のIRマネジメントコースの現況は。 「学生はキャリアアップを目指す専門職や、IRの新しいビジネスチャンスに挑戦したい起業志望者など、さまざま。アメリカの大学の協力を得て、ラスベガスのIRで研修を実施した。カジノやコンベンションホールなどがどのように運営されているのかを、学生たちは現場で視察することができた。日本型IRのマネジメントを担える人材を、少数精鋭でしっかり育てていきたい」 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑) ■美原融(みはら・とおる)1950年生まれ、一橋大学経済学部卒業。三井物産、同戦略研究所勤務を経て、現職。主な著書に「日本版カジノ」(共著・東洋経済新報社)、「カジノ導入をめぐる諸問題」(同・大阪商業大学アミューズメント産業研究所)など。2015年春開設された同大大学院のIRマネジメントコースでも指導。