[MOM4947]大津DF五嶋夏生(3年)_苦悩の時期を経て前向きに変化。雰囲気作りと堅守支えた主将が笑顔で「ファイナル出場権獲得」のボードを掲げる
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.24 プレミアリーグWEST第20節 大津高 2-1 静岡学園高 大津町運動公園球技場] 【写真】「えげつない爆美女」「初めて見た」「美人にも程がある」元日本代表GKの妻がピッチ登場 苦悩した時期も乗り越えての戴冠。「ファイナル出場権獲得」のボードを手にする主将の表情からは、喜びがにじみ出ていた。大津高(熊本)がプレミアリーグWEST優勝を果たし、プレミアリーグファイナル(12月、埼玉)への出場権を獲得。DF五嶋夏生主将(3年=ブレイズ熊本出身)は、「自分が入学してきた時にはこういう風になるとは思ってませんでしたし、本当に感慨深いというか、(優勝決定からやや時間が経ったが)ちょっとまだ実感できてないです」。一週間前に熊本県内3冠を達成した大津は、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグWESTのタイトルも獲得した。 この日は静岡学園高(静岡)とのホームゲーム。前期の1-8の雪辱を目指す静岡学園のテクニックや切り替えの速さに苦戦を強いられた。大津は先制直後にCKから同点に追いつかれ、後半開始直後にはDFラインの背後を取られて大ピンチを迎えるシーンも。だが、「難しいゲームになる」と理解して戦っていた大津は崩れない。 「1個良くない対応はありましたけど、最終的にやられなかったので、そこは良かったなっていう風に思います。1-1で前半は終わりましたけれども、後期は特に1-1のゲームとか、1-0のゲームとかも多かったですし、チームとしてネガティブな雰囲気ではなかったかなっていう風には思います」と五嶋。CB村上慶(2年)とともに最終ラインの中央で相手の攻撃をケアし続け、「技巧派軍団」静岡学園をシュート5本に封じた。 190cmの大型センターバックは、“優勝決定戦”で堂々のプレー。「自分が明るく振る舞うことによって、チームものみんなも自信持って進めるという風に思ってたんで、ちょっと不安もありましたけど、キャプテンとしてそういう振る舞いはできたのかなっていう風には思います」と頷いた。 山城朋大監督も「(危ないシーンもあったが、)個人的にはやっぱり五嶋が最後のとこのカバーリングして、本当にリズムのいい静学から、流れの中では失点しなかった。それ以上に、やっぱりこの試合に向けて、かなり本人も気持ち入れて、日頃からいい感じでした」と的確なカバーリングと決戦への準備を含めて主将を評価。五嶋は「先週、選手権の決勝もあって、浮かれずにっていうのは山城先生も考えられたと思うんで、そういったところは(みんなも)気引き締めてやってくれたのかなっていう風には思います」と仲間たちに感謝していた。 プレミアリーグWEST首位で迎えたインターハイ予選は、「勝たなければならない」と考えすぎて動きが硬くなってしまう部分があった。この大会は優勝したものの、インターハイは初戦で敗退し、優勝を目指した和倉ユース大会でも準々決勝敗退。決して順風満帆の1年ではなかった。 五嶋は「(夏から秋は)チームとしても本当にネガティブな状況で、自分もどうすればいいのかなっていう風な、本当にマイナスな気持ちにもなっていましたし。そういった中で、本当に山城先生には常に厳しい言葉を掛けてもらって。自分がマイナスな気持ちになることで、チーム全体としてもそういう雰囲気にさせてしまうっていうのは、山城先生の言葉で気づくことができました」。また、副主将のFW山下景司(3年)やブレイズ熊本時代からのチームメートで同じクラスのMF嶋本悠大(3年)やDF野口悠真(3年)の気遣いや声がけによって、前を向くことができた。 主将の変化をチームメートたちも感じていた。この日決勝点のMF溝口晃史(3年)は「やっぱり(9月に)サンフレッチェに負けたあたりから、どんどんこう前に出るっていうのも強くなってきて、キャプテンらしい言動や振る舞いが多く見られるかなと思っています」と語り、MF畑拓海(3年)も「夏生は言わないといけない時に自分がそれを発言することで、自分が嫌われ役に回るっていうのはあるんですけど、そういうのを彼は一切気にせずに、やっぱりチームのことを考えて言う時もありますし、メリハリを持たせてくれるすごい頼りがいのあるキャプテン」とコメント。指揮官はこれまで指導した主将の中で最もコミュニケーションを取っているという五嶋への信頼を口にした上で、鹿島でブレイク中の元主将のような人間になって欲しいと期待する。 山城監督は、大津の主将で特に印象に残っている存在としてDF濃野公人(現鹿島)の名を挙げ、「本当に大人と接してるようでした。彼らとチームを作った時間は僕の中でも凄く勉強になったし。だから、キャプテンをする選手には公人みたいな人間になってもらいたい」。五嶋は、1年時から我慢強く起用してもらったことで、成長を加速。高さと強さ、速さも備える五嶋は高校世代トップクラスのCBとなった。大津でプレーヤーとして、人間として成長した主将はチームメートとともにより成長し、プレミアリーグファイナルを迎える意気込みだ。「選手権も意識しないといけないですけれど、まずはファイナルですね」。恩師やチームメートに支えられながら大津の歴史を変えた主将が、次は“日本一”を勝ち取る。