人口の「3人に1人」が「高齢者」に…働き手が一気に減少する「2040年問題」 どんな対策が立てられている? 専門家が解説
◆社会保障費の負担増、人手不足にどう対応するか
吉田:「2040年問題」は16年後ですが、今、どのような対策が進められているのでしょうか? 塚越:まず2040年問題の大きな課題は社会保障です。三菱総合研究所の試算では、年金や医療、介護といった社会保障給付費は、2020年の132兆円に対して2040年には165兆円と1.25倍に急増します。 政府は、一定以上の所得がある高齢者にも負担を求めるなど、現役世代が高齢者を負担するというだけでなく、能力に応じて支え合う「全世代型社会保障」への移行を目指しています。 また、人手不足の解消に向けて、経団連が5月に外国人労働者の受け入れ環境を議論する「外国人政策委員会」を新設しています。去年末時点で、日本にいる外国人はおよそ341万人で、だいたい人口の2%です。ただこれはOECD(経済協力開発機構)諸国全体のおよそ10%よりも低いです。 毎日新聞は、この外国人政策委員会について、外国人労働者を増やして状況の改善する試みだと報道しています。ただ、やはり、ここまで円安が進行していますので(※放送時点)、外国の方が日本に来て働くことのメリットは残念ながら減っています。 さらにいえば、日本はこれまで国際貢献という理由で「外国人技能実習制度」という名の下で外国人労働者を受け入れていたのですが、実態としては外国人労働者を「安く買い叩いていた」という負の側面があります。 去年の時点で、日本に在留する外国人の技能実習生はおよそ40万人いて、工場などで働いています。今年に入って法改正があり、技能実習制度は廃止され、3年後までに「育成就労制度」というものが新たに生まれます。この育成就労制度にも「これまでとあまり変わっていない」といった批判はありますが、何にせよ外国人労働者を受け入れるのであれば、これまで以上に外国人が日本で暮らす環境や権利の向上が重要になります。 日本人がやらない仕事は外国人してもらうといった尊大な態度は、残念ながらまだ日本社会にあるように私は思います。日本社会を本気で維持しようとするなら、外国人労働者に対する私たちの意識を変えていく必要があるかなと思います。