世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その2・10年後の金融資産は4750万!(中嶋よしふみ FP)
■住宅コストは240万円も増加!? バッファーってなんだ?
中嶋:了解です。年額で計算すると収支はこんな風になります。 ●現在の家賃 17万×12=204 ●購入後の支払い額 返済額 29.2×12=350.4 管理費等 5.5×12=66 固定資産税 28 合計444.4万 ●収支にマイナス 賃貸と購入の差額 240.4万 ●収支にプラス 住宅ローン減税 42万(3000万円の上限×0.7%×二人分) 保育園の無償化 72万(3歳から) ●収支 購入前の貯金額に、プラスとマイナスの要素を考慮する。 350-240.4+42+72=223.6 中嶋:こんな感じになります。Googleスプレッドシートで収支を計算する図も作りました。購入前の貯金額を基準に、左側がプラスの要素、右側がマイナスの要素です。これを合算すると購入後の収支、貯金額が分かります。結論から言うと購入後の収支は223.6万のプラスです。350万円から100万円以上減ってはいますけど、それでもかなり貯金が出来ます。貯蓄率が高いことが大きくプラスに働いてますね。 中嶋:240万も住宅コストが増えるのは非常に負担が大きいんですけど、プラスの要素も二つあります。住宅ローン減税(控除)が二人で6000万円分、0.7%で年42万円。あとはお子様の保育料が来年度から無料ですから約72万の教育費が浮きます。これはかなり大きいです。こんな風に貯金額にマイナスの要素とプラスの要素を考慮すると購入後の収支、貯金額が簡単に分かります。あ、ペアローンですよね? 妻:そうですね、割合はまだ決めてませんけど半々か夫が少し多いくらいになると思います。
■タワマン購入後でも年間貯金額は223万
夫:もっと酷い状況になると思ってましたけど、思ったより全然マシです。ただこれは買った時点の収支ですよね。住宅ローン減税は10年?13年? 中嶋:13年です。繰り上げ返済をしなければ固定でも変動でも13年後のローン残高は6500万円以上残ってますから、減税額は13年間上限一杯で変わらずです。第二子をお考えですと、奥様の産休と育休でその時期は減税枠を使えないのと、あとは収入が大幅に減りますので一時的には収支がゼロとかマイナスになる可能性はあります。私立小・私立中に通ったり、習い事にお金をかけたりといったライフステージの変化でも収支はもちろん変わります。そのあたりはどうでしょう? 夫:さすがに私立小は考えてないですけど、私立中はあるかな……ある? 妻:私は通わせたいです(笑)。 夫:この図、年間の貯金額を基準に考えるのは分かりやすいですね。返済比率が高いとか低いとか言われてもあまりぴんと来てなかったんです。 中嶋:ウチではこの図を「バッファー・緩衝材」と呼んでます。金銭的なダメージ、つまり収入のマイナスと支出の増加にどれくらい耐えられるか?という意味です。 ーー従来から使われている返済比率が役に立たない理由は支出を無視して収入だけで考えるからだ。この夫婦のように貯蓄体質の家庭とそうでない家庭を、収入が同じだから最適な予算も同じと考えることは明らかに間違いであると誰でも分かる。 では収入と支出、両方を考慮した数字は何かというと毎年の貯金額だ。ストックではなくフロー、現在たまってる貯金ではなく毎年の貯金額の方だ。貯金額が多いほど大きなダメージに耐えられる、つまり高額な物件を買える、ということになる。 中嶋:バッファーの基本的な考え方は「差額」で計算する、という部分です。すでに払ってる支出は収支の結果である貯金額に含まれていますので。収入も支出も増えた額・減った額だけ計算に含めてます。住宅ローンも返済額ではなく家賃との差額、家を買ったあとに増える分だけ貯金額から差し引いてますよね。これがバッファーの考え方です。 妻:差額ですね。分かりました。
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