「言うべきことを言えない外交になってきている」元特命全権大使が日本外交の課題と危惧を激白
テレビ愛知
トランプ氏の大統領返り咲きが決まったアメリカに、台湾に軍事的圧力をかける中国。果たして石破総理は渡り合っていけるのか。前駐オーストラリア特命全権大使の山上信吾さんに、石破内閣が抱える外交の課題と、日米・日中関係の行方について聞きました。
トランプ氏再選後の日米関係
トランプ氏の返り咲きで日米関係はどうなるのでしょうか。前駐オーストラリア特命全権大使の山上信吾さんは「本当にそこにある危機だと思っている」と話します。 前駐オーストラリア特命全権大使 山上信吾さん: 「トランプさんも1期目と違って、大いに経験値を積んで自信を持って2期目に臨んでくるので、日本の総理大臣の言うことを『はい、わかりました』と聞くような立場ではない。 この前の石破さんの電話会談がわずか5分で終わったことは象徴的で、そういう首脳間の関係でどうやって日本の立場をしっかりアメリカの大統領にインプットして、日本の国益の実現に資するようにすることは、非常に難しい課題だと思う」 石破総理が外交安全保障で目標にしているのが「アジア版NATO」の設立です。多国間でアジア地域の安全保障体制を構築するという構想ですが… 山上さん: 「唯一の同盟国であるアメリカから見ても『日本、大丈夫かよ』という感じがみなぎっている。『アジア版NATO』『日米地位協定の見直しと改定』は、2つともアメリカ人には全く響かないというか、何をあさっての議論をしている、というのが率直な受け止め方だと思う。だから心配している」
対中外交も危機
山上さんが危惧しているのは、アメリカとの関係だけではありません。隣の国「中国」との関係です。 山上さん: 「2022年8月、中国が初めて日本の排他的経済水域にミサイルを撃ち込んできた。あれ以来、日本の反応は非常に腰が引けていて、怒るときに怒れない、言うべきことを言えない外交になってきてしまっている。その典型例が深センで10歳の日本人児童が惨殺されたときの日本政府の反応。端的に表れている」 2024年9月、中国南部の深センで、日本人学校に通う児童が登校中に刃物で刺されて死亡しました。 上川陽子外務大臣(当時): 「改めて中国側に対し、日本人の安全確保を求めていくとともに、再発防止に向けどのような追加的措置が可能か、事務方に検討を指示した」 当時の日本政府は、事実関係の早急な説明を中国側に要請し、在留邦人の安全確保の徹底と再発防止を求めました。しかし、外務大臣が中国の駐日大使を呼んで「厳重抗議する」などの力強い対応はありませんでした。 山上さん: 「もう日本は歯向かってこない、注文してこないと。こういうのが習い性になりつつあるのは非常に残念。3つの要因があると思う。 1つは日本人の性格、和を以て貴しとなすというか、争いを好まない『お人よし』。2つ目に外務省の多くの人間が思っている外交の認識。『足して2で割る』『外交とは妥協の芸術だ』というようなことを言って、はばからない人もいるぐらい。3つ目は政治家の胆力の不足。交渉をまとめたがる。政治家として『壊してこい』『言うべきは言ってこい』という政治家はまずいない」
世界は激動の時代 厳しい外交戦略
アメリカではトランプ氏の大統領返り咲きが決まり、中国は台湾に軍事的圧力をかけるなど、今、世界は激動の時代を迎えています。少数与党の石破内閣は、今後、厳しい外交戦略を求められることになります。 山上さん: 「とにかく、どうやって台湾有事が発生しないように抑止力を高めていくか。戦争が起きないように抑止力を高めることが、今こそ大事な時期はないと思う。そのために1番肝心なのは、アメリカとの同盟を日本の国益に資すように使っていくことだと思う。それを日本の政権指導者や霞が関の官庁にいる人にやってほしい」
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