島根原発再稼働、電力の安定供給に恩恵 トラブルなしの運用不可欠
約13年ぶりに再稼働した中国電力島根原発2号機(松江市)。事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉だが、津波対策の防潮堤や耐震設備など64項目の安全対策が施され、専門家は「事故前とは別物」と評価する。ただ10月に再稼働した同型の東北電力女川原発2号機(宮城県)ではトラブルが発生し、原子炉起動からわずか7日目に一時停止する事態となった。電力需要が増える中、安定電源として欠かせない原発を安全に稼働させ続けることが求められる。 島根原発は全国で唯一県庁所在地に立地し、2号機は平成元年に営業運転を開始。核燃料で水を直接熱して水蒸気を発生させる「沸騰水型」と呼ばれるタイプで、再稼働は女川2号機に次いで2例目。これまでに関西電力や九州電力など西日本で再稼働した12基はすべて加圧水型だった。 沸騰水型は加圧水型と比べて構造がシンプルで建造費が安いメリットがある。しかし、蒸気に放射性物質が含まれる上、原子炉が入る格納容器が小さく圧力が高くなりやすいため、放射性物質が外に漏れるリスクが高いと指摘される。 島根2号機では配管や機器の耐震化、海抜15メートルの防波壁、電源供給が止まった際のガスタービン発電など多岐にわたる対策が施されている。事故発生時に放射性物質の拡散を防止するためのフィルター付きベント(排気)設備も備える。 近畿大原子力研究所の杉山亘准教授は「浸水を止める、原子炉を冷やす、放射性物質を閉じ込めるといったすべてをグレードアップしている。原発事故前とは別物と考えてほしい」と話す。 原発による安定電源確保は国民生活の安全を支えることにつながる。30年の北海道胆振(いぶり)東部地震では北海道ほぼ全域が大規模停電に陥り、日本初の「ブラックアウト」となった。地震によって複数の火力発電所が停止したことが原因で、対策として原発が稼働していない北海道と本州を電力融通するための「連系線」強化が進められている。 政府が年内に取りまとめる「エネルギー基本計画」には自民党が求める原発の建て替え推進が盛り込まれる可能性が高く、専門家も「停電対策には電源を分散することや各電力会社による融通が重要だ」と指摘する。