「タンタンが嫌がることは、絶対しない」…パンダのタンタンと飼育員さんたちの、知られざる絆
やせ細った体が元に戻っていく
その後も、サトウキビジュースに薬を入れる方法はタンタンに見破られることなく、毎日きちんと薬を飲ませることができた。それにともない、タンタンは少しずつ元気を取り戻し、天気がよい日には運動場に出て散歩するようにもなった。そして、散歩から戻ると、鉄の扉の前に座ってなにかをアピール。 「お腹すいたの? ちょっと待っててね」 そう言って梅元は食事の準備に取りかかる。食欲も戻り、竹をもりもり食べるようになった。やせ細った体も、元に戻っていく。 「あっ! お腹トントン始まったよ」 梅元が吉田に声をかけると、二人は作業の手を止め、屋内展示場の壁にもたれながら座るタンタンに目をやった。 トントン トントン トトトトトン 手で小刻みにお腹を叩く。リズミカルでまるで腹鼓を打っているようにも見える。 「あれ、最近増えたよね」 もしかしたら、前からやっていたのかもしれない。でも、薬を飲んでくれないときはそんなことに気が付く余裕すらなかった。 少しずつだが、平和な日常が戻ってきた。この先、タンタンを待ち受けている道のりは、決して平たんではなく、つらく険しいものに違いない。それでも梅元と吉田は、タンタンとなら乗り越えていける、そう力強く思える自信にあふれていた。
杉浦 大悟(NHK 専任部長)