銀座に構える5年半の“城”「天職かも」 ロンドン五輪代表候補が歩むセカンドキャリア【インタビュー】
「飲むなと言われても無理だし、そういうサッカー人生だったとしか言えない」
ちょっぴり苦い過去も、清々しい表情で語れるのが比嘉という男だ。 「原因は酒の頻度と睡眠の少なさでしょうね。知ってました(笑)。怪我は全部が筋肉系だったから。でも、自分がやったことだから自分の責任。(酒を)飲むなと言われても無理だし、そういうサッカー人生だったとしか言えない。周りの選手はほとんど飲まずに真面目だった。今の時代の選手はもっと飲まないと思う。みんな自分自身が決めた道を行って、責任を取ればいいと思うんです。お世話になったメディカルスタッフのみなさん、仕事を増やしてごめんなさい」 サッカーの時間は終わった。最近は小学校6年生と3年生の息子と一緒にボールを蹴るくらいがちょうどいい。今はセカンドキャリアの充実しか頭にない。2店舗目をオープンさせる夢を密かに抱いている。 「バーの店員は、やろうと思えば誰だってできるもん」 そう言い放つと、おかわりのハイボールを体内へ流し込む。グラスにはほとんど溶けていない氷だけが残っていた。 「そろそろ出勤かな」 常連さんに呼び出されて近所のクラブへ“出張”するのだという。その後は、アフター客として自身の店に連れ戻ってくるのがお決まりのコースだ。 ジャケットを羽織り、黒いコートに身を包む。比嘉祐介は銀座の街へ消えていった。 [著者プロフィール] 藤井雅彦(ふじい・まさひこ)/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』などがある。
藤井雅彦 / Masahiko Fujii