SNSで広がる「発達障害民」「グレーゾーン」「HSP」は全て間違い…専門家が指摘する発達障害の正しい理解
■知的障害と発達障害の違い とはいえいまでも、その人が持つ障害特性をもって障害とするか、社会生活を送るうえで一定の不具合が生じる(実感した)社会的障壁をもって障害とするか、話す人によって考え方はまちまちです。このあたりにも、発達障害ということばのややこしさ、同じ「発達障害」ということばを使っているのに起こるボタンの掛け違いがあります。 発達障害とよく混同されることばに、知的障害(知的発達症)があります。ASDやADHDなどの発達障害と、知的障害は、実は大本をたどっていくと同じグループに入ります。ただ、基本的に見ているベクトルが違っていると思ってください。 知的障害は標準化された知能検査によって算出された「知能指数(IQ)」が低下し、それがもとで日常生活に何らかの支障をきたしている状態に対して診断されるものです。 知能指数に影響する要因は多岐にわたりますが、原因を特定して診断するものではありません。発達障害特性が知能検査で測定されるようなスキルの獲得を阻害することもあり得ます。つまり知的障害とそれ以外の発達障害は併存することも充分あり得るわけです。 ■耳あたりのいい発信が誤解を生む 一方でASDやADHD、限局性学習症(SLD)といった「いわゆる発達障害」は、特徴的な行動特性があり、それがもとで日常生活に支障をきたしている状態に対して診断されるものです。 つまり、後者の場合、知能指数(IQ)は考慮の対象外となります。実際、ASDでの知的障害の合併率は3分の1から2分の1強といった報告がなされています。もちろん、これらはどこまでをASDとするかによって大きく変わります(時代によって知的障害の合併率も大きく変わりました)。 昨今、「発達障害はこういう特徴があるよね」と耳当たりよく発信する例が数多く見受けられますが、知的障害を合併していない限定的な事象を「発達障害のすべて」と過度に単純化したものが圧倒的に多いように思われます。 この手の過度に単純化した耳当たりのよい発信は多くの人に誤解を与えかねませんし、最も危惧されるのが発達障害の特性がある子どもの保護者の方に誤解と不安を与える可能性です。子どもの全体像は発達障害の特性だけでも、知能指数だけでも決まるものではない。この点を肝に銘じておいてください。