守田英正&上田綺世がW杯予選で決めた“フットサル的ゴラッソ”に日本代表・高橋健介監督が言及「フットボールの戦術として、概念では同じ」|フットサル
サッカーのゴールが「フットサル的だ」と話題になっている。 【映像】守田&上田で決めた話題の“フットサル的”連携弾 サッカー日本代表は11日、2026年W杯アジア最終予選でバーレーン代表と対戦し、5-0で勝利を収めた。2-0で迎えた61分に守田英正が決めた追加点は、上田綺世との秀逸なコンビネーションで奪ったゴール。一連のフィニッシュワークは「崩しが完全にフットサル!」と直後からSNSで話題となった。いったいどんな部分が“フットサル”なのだろうか。現フットサル日本代表・高橋健介監督がこのゴールについて言及した。 守田のゴールシーンは、自陣の組み立てから右サイドを経由し、中央やや左で受けたところでスイッチが入った。守田はボックス手前で待つ上田に縦パスを送ると、すぐさまボールを出した方向へランニングを開始。ゴールに背を向けた上田は、ボールを受ける直前から左腕を使ってディフェンスとの間合いを測りながらキープすると、自身の右横をすり抜ける守田へリターン。守田はボックス内で抜け出して、GKとの1対1を冷静に沈めて日本に追加点をもたらした。 このゴール映像が『DAZN』のSNSで投稿されると、ファンは直後から「崩しがほんとにフットサルみたい」「完全にフットサル」と話題になった。ボランチの守田がパスを出し、FWの上田がキープして再び守田に落としてフィニッシュする形はいわゆる「ポストプレー」ではあるが、これはフットサルにおける「ピヴォ当て」と呼ばれる戦術と酷似している。 ピヴォ当てとは、狭いピッチの中、相手ディフェンスとの距離が近い状況を中央から打ち破るグループ戦術の一種であり、FWのように前線に張り出す“ピヴォ”が縦(あるいは斜め)のパスを足裏で受け、キープしながら次のプレーを選ぶ。マーカーと入れ替わるようにターンして自らフィニッシュすることもあれば、今回の守田のように、出し手のパサーが再び走り込んで、落としをもらってシュートに持ち込む形や3人目が絡む形など、複数の選択肢をもちながら崩す戦術である。 バーレーン戦から2日後、新体制として始動したフットサル日本代表の高橋健介監督も、「サッカーへのリスペクトがあるので、フットサルの戦術をそのまま当てはめて言うことはできない」と前提を伝えつつ、このプレーに言及した。 「(守田選手のゴールは)前の選手に当てて、そこに対してオーバーラップして関わり、3人目の動きもあるというフットボールの戦術です。それは今日の(フットサル日本代表の)トレーニングでやった内容からしても違和感がないものだと思います。オーバーラップして誰かを経由して使うということで言えば、抽象的な概念では同じものです」 つまり、相手守備を翻弄して局面を打開するグループ戦術という点では分け隔てるものではない、ということ。では、「ポストプレー」と「ピヴォ当て」でなにか違いがあるのだろうか。 「足の裏でキープしているFWの選手の空間に入っていくプレーは、サッカーではあまりないかもしれません。以前、森保さんともディスカッションするなかで、まずはスペースに落とすという考えがあるようです。その点で言えば、スペースがないように見える1、2メートルの範囲を『フリー』と捉えるかどうかの違いはあると思います」 守田がフットサルを意識したとは言い難いものの、ある意味で“フットサル的”な感覚でスペースを認知していた可能性は高い。フットサル界隈のファンが「見事なピヴォ当て!」と感嘆するゴラッソはそれほどまでに意図の見える連係だった。 フットサルにおいては、コートサイズやプレー人数などのゲーム性が似ているアリーナスポーツという点で、バスケットボールの戦術が持ち込まれてきた経緯がある。ボールを手で扱うバスケに学び、フットサルの戦術に落とし込むプレーはいくつもある。それと同じように、サッカーもフットサルに学ぶ要素は大いにある。競技フットサルは、サッカーの4号球と同サイズのボールを使っているものの、より弾みづらいローバウンドに設計され、なおかつ体育館やスポーツコートなどイレギュラーバウンドのないピッチでプレーできるためボール操作しやすく、サッカーよりも再現性を出しやすいとされている。 狭い局面で数的有利を生み出して崩すサインプレーや動き方など、その原理原則はサッカーに置き換えられるものが多く、スペインやブラジル、イングランドなど、海外の最高峰のサッカー監督も熱心に採り入れている事例もあるほどだ。日本でも、木暮賢一郎前フットサル日本代表監督時代、サッカーの森保一監督がその練習を視察していたという経緯もある。 「フットサルにサッカーは生きる」と言われて久しいが、競技間の垣根が薄まっている今、高橋監督が話した「フットボールの戦術として、抽象的な概念では同じ」という部分は示唆に富んでいる。サッカーもフットサルも、両競技間で学べることは多く、フットボールファミリー全体で情報共有していくことは、日本のレベルアップに必要なことではないだろうか。