【インタビュー】ヤクルト・高橋奎二 新しい自分に出会う「良かったころに戻すのではなく、今の自分を理解して、どう投球につなげていくか」
手応えありの春
ヤクルト・高橋奎二
次期エース候補と言われて何年がたっただろうか。通算22勝22敗。期待の大きさからしてみれば、これまで残してきた成績には物足りなさが残る。Bクラス転落から2年ぶりのペナント奪取へ、誰もが待ち望んでいるのが左腕の完全開花だ。この男の快投なくして、歓喜の秋は想像できない。 取材・構成=小林篤 写真=宮原和也、高原由佳、BBM 2023年は実りの1年となるはずだった。21、22年と日本シリーズで好投し、23年開幕前には侍ジャパン日本代表の一員としてWBC世界一を経験。しかし、シーズンでは持ち味のストレートが精彩を欠くなど本来の姿とは程遠く、成績は4勝9敗。負けが大きく先行し、リーグ3連覇に挑んだチームも5位に沈んだ。「負けてチームは強くなる」とは高津臣吾監督の言葉。過去は変えられないが、生かすことはできる。高橋奎二も昨季の経験を糧にしながら、今年こその思いで開幕へ向けて準備を進めている。 ──WBCに出場した昨年とは違い、ペナントに照準を合わせて春季キャンプを過ごせたのではないでしょうか。 高橋 そうですね。それこそ去年はWBCに向けて調整も早かったですし、中継ぎでの対応という違いもありました。今年はWBCもないですし、自分のペースで調整を進めることができています。 ──昨年は4勝9敗の成績に終わりました。結果から見ても、投球の感覚はよくなかったのでしょうか。 高橋 率直に言うと、投球に対してはキャッチボールも含めて、いい感覚が一度もありませんでした。 ──それは投球フォーム自体の感覚がよくなかったのでしょうか。 高橋 速い球を投げたい気持ちが強いあまり、フォームを崩していきました。また、WBC球に苦戦したのもあります。前年(22年)の良かったころのフォームに戻そうと試行錯誤したのですが、バラバラになってしまって……。最後まで治ることはなくシーズンが終わってしまいました。 ──これまでは速い球を投げたい気持ちを持ちつつ、納得のいく球が投げられていたのでしょうか。 高橋 速い球というより、真っ向勝負をしていく気持ちですかね。ただ、去年に関しては勝負に挑んでも打たれてしまいました(昨季ストレート被打率.276)。そこで、「去年(22年)、一昨年(21年)とは違う球なんだ」と気づき、いろいろと試したのですが、どれもうまくフィットしなくて。打たれると、速い球を投げたい思いも強くなり、さらにフォームが乱れてしまう悪循環でした。 ──昨季はポストシーズンの戦いがありませんでした。長いオフ期間は何を考え、意識して取り組まれたのでしょうか。 高橋 まずはしっかり休むことを一番に過ごしました。また、新しいことも取り入れようと思い、ジムを新しく変更して、今までとは違うメニューにも取り組みました。 ──どういったメニューに取り組んできたのでしょうか。 高橋 今までは高負荷のウエート・トレーニングで体の土台をつくっていたのですが、今回は・・・
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週刊ベースボール