米IT大手「トランプ詣で」…独禁法訴訟にらみ相次ぎ寄付、側近マスク氏のけん制も
【ニューヨーク=小林泰裕】米国のトランプ次期大統領に、大手IT企業が相次いで秋波を送っている。各社は反トラスト法(独占禁止法)訴訟などを巡ってバイデン政権と緊張関係にあったが、トランプ氏の就任を機に関係改善を図る狙いがある。トランプ氏の側近である実業家のイーロン・マスク氏をけん制する思惑もありそうだ。
トランプ氏は16日の記者会見で誇らしげに語った。
米主要メディアは11~13日、メタ(旧フェイスブック)とアマゾン・ドット・コム、オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が、来年1月の就任式の活動費用として、それぞれトランプ氏に100万ドル(約1億5800万円)を寄付する方針だと報じた。
アルトマン氏は「トランプ氏はAI(人工知能)時代に米国を導く存在だ」との声明まで公表した。12日にはグーグルのサンダー・ピチャイCEO、13日にはアップルのティム・クックCEO、16日には中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の周受資CEOが、それぞれトランプ氏と会談したと報じられている。
規制緩和に期待
大手ITは、トランプ氏と対立することが多かった。
2021年の米連邦議会襲撃事件を受け、メタは一時、トランプ氏のフェイスブックのアカウントを凍結した。アマゾンも、創業者のジェフ・ベゾス氏が民主党寄りの米紙ワシントン・ポストのオーナーであることもあり、トランプ氏と対立関係にあった。アルトマン氏やピチャイ氏も、トランプ氏の政策などを批判していた。
各社が一転してトランプ氏との関係改善を急ぐ背景には、トランプ政権下の20年からバイデン政権下の24年にかけ、米当局がグーグル、アマゾン、メタ、アップルを相次いで独禁法違反で提訴したことがある。いずれも敗訴すれば、事業に大きな影響が及ぶ。
バイデン政権は大手ITに特に厳しい姿勢で臨んだが、トランプ氏はAI分野の規制緩和に積極的に取り組む方針で、IT企業への規制も緩和されるとの見方がある。大手ITは、トランプ氏が就任後に訴訟で厳しい立場を取らないよう働きかける狙いとみられる。