キオクシアIPOに陰り、公開価格が仮条件上限を下回る-今年2件目
(ブルームバーグ): 9日に発表されたキオクシアホールディングスの新規株式公開(IPO)価格は仮条件の上限を下回った。投資家の需要が弱い兆候との指摘がある。
キオクシアのIPO価格は1455円と、仮条件1390-1520円の中間で決まった。日本取引所グループのデータによると、仮条件を示したIPO案件で今年すでに価格が決まった72件のうち、上限を下回ったのはTerra Droneに続く2例目。全体のわずか3%だ。
ブルームバーグのデータによると、約1200億円の資金吸収額を伴うキオクシアのIPOは、東京地下鉄(東京メトロ)やリガク・ホールディングスに続いて今年3番目の大型上場。ただ、投資家の間ではNAND型フラッシュメモリー市況の低迷が懸念されている。
主にスマートフォンやサーバーのストレージに使用される同メモリーは、世界的な需要の大幅な落ち込みを受けてコロナ禍のピーク時から低迷。ただ、データセンターへの需要が復活し、価格は持ち直しの兆しもある。
三菱UFJアセットマネジメントの友利啓明エグゼクティブファンドマネジャーは、需給で公開価格が決定されたとすれば、仮条件が示された際に感じた需要の強さはそこまでではないように見えるとし、「メモリー市況が良くないことが背景にあるだろう」と指摘。投資家がIPOに申し込むことに「迷いがあったようだ」と述べた。
ブルームバーグのデータによると、今年のIPO資金吸収額は約9300億円に上る。企業価値の向上やデフレが終わる兆しに後押しされた好調な株式相場に支えられ、2018年以来の規模に膨らむ見通しだ。
ブルームバーグ・インテリジェンスの若杉政寛シニアアナリストは、NAND市場はやや供給過剰リスクはあるものの、「需給はおおむね均衡する可能性が高く、大きな値崩れにはつながりにくい」とリポートで指摘。キオクシアは最先端NANDの技術開発に注力してサーバー向けの出荷を拡大させる戦略であるため、「25年の売上高はプラス成長が可能だろう」と記した。
(c)2024 Bloomberg L.P.
Yasutaka Tamura