小倉智昭さんと「とくダネ!」で20年共演した笠井信輔アナが明かす「最後の会話」と「番組の黄金時代」
■卓越した「オープンニングトーク」 「とくダネ!」は、ニュースをズバッと斬る、歯に衣(きぬ)着せない小倉さんの発言が視聴者にウケた。とりわけ、小倉さんの「オープニングトーク」は番組の名物だった。 「初めは5分という約束だったのに、いつの間にか、大体8分くらいしゃべっていましたね。たまに、15分くらいしゃべることもありました(笑)。その間、こちらはずっと立っているので焦ってくるし、トークが10分を過ぎると、現場は『ちょっとまずいぞ』という雰囲気になっていました。とはいえ、各局がしのぎを削る朝の情報番組の中で、視聴率で10年ほど1位を獲得するまで支持されたのは、やはり小倉さんのオープニングトークがあったからだと思います」 20年間の共演の中で、小倉さんから注意されたことを笠井さんはよく覚えている。 「小倉さんはゲストをとても大事にする人なんです。『ゲストより先に意見を言うな。ゲストがしゃべってからでいい。笠井くんがしゃべると、先に言われちゃったとか、時間がなくなったとか、いろいろ問題が出てくるから。笠井くんはアナウンサーなんだから、意見を後で言いなさい』というのは何度も言われました。私としては、こっちから斬り込んでいけばいいのにとか、小倉さんがもっと早めに吠えればいいのにって思うことは何度もありましたよ。ただ、小倉さんはバランスよくみんなにしゃべってもらうことを常に意識していました。好き勝手やってるようで、意外とスタジオ回しが丁寧なんです」 小倉さんはキャスターとして、ニュースの真実を伝えることに情熱を持ち続け、弱者への思いやりを忘れなかったという。 「小倉さん自身が少年時代、言葉が詰まってうまく話せない吃音(きつおん)だったから、アナウンサーを目指そうと思ったそうです。マイノリティーである経験をしながら、それをどう乗り越えるかを実践していました。アナウンサーになってからは、『ゆっくりしゃべり出すっていうことを意識している』とよく言っていました。大人になっても、実は本当に仲のいい人の前では、吃音が出ることもあったそうです。だからこそ、弱者への優しさをいつも持っていましたね」