〈カナダは米国の51番目の州になるのか?〉トランプの「米国第一主義」は領土の「拡張主義」へ「グリーンランド、パナマ運河、カナダが標的に」
パナマ運河を巡る攻防
グリーンランド購入に加えて、トランプはパナマ政府にパナマ運河の米国の管理権の再取得を訴えている。1903年以来、米国は同運河を永久租借していたが、1977年9月7日の新パナマ運河条約によってパナマとの共同管轄に移った。 その後、1999年12月31日に管轄権はパナマに返還された。ちなみに、上記の新パナマ運河条約に署名したのが、2024年末に亡くなったジミー・カーター元大統領であった。 カーターが死去すると、トランプは自身のSNSに、「私は彼(カーター)に最大の敬意を払っている」と、カーターの業績を称賛する投稿をした。しかし、実際のところトランプは、カーターの業績を覆そうとしている。米国は不当に高額の運河通航料を課せられているので、再びパナマ運河の管理権を取得し、米国の管理下に置くと、トランプは言うのだ。 また、英公共放送BBCによれば、ホンコン系企業がパナマ運河の入り口にある2つの港の管理に携わっている点も懸念材料になっている。 トランプは就任後、パナマ政府に圧力と脅しをかけ、運河通航料の引き下げか、管轄権の返還かの二者択一のディールを突き付けることになる。これに対しても、パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は「われわれの国の主権と独立に関して交渉の余地はない」と述べ、トランプの要求を退けた。 パナマは、2017年に台湾との国交を断絶し、翌18年に習近平国家主席の訪問を受け入れ、「一帯一路」に署名した。これにより、パナマと中国の関係が著しく近くなった。 中国からすれば、パナマ運河は欧州へつながる国際貿易の最重要地点である。当然ながら、米国は、パナマ運河が中国の管理下に置かれることに強い警戒心を示している。
トランプのトルドー“いじめ”
トランプはカナダが「米国の51番目の州になる」と自身のSNSに投稿し、ジャスティン・トルドー首相を「トルドー知事」と呼んだ。そうなれば、カナダは「税金と防衛費を節約できる」と冗談交じりに言った。 第1期目のトランプとトルドーの関係は、決して良好であったとは言えない。トランプはトルドーを「弱いリーダー」と呼び、一方、トルドーは、トランプに批判的な発言している姿をメディアに撮られてしまった。 トランプは第2期目の大統領就任初日に、カナダからの米国への輸入品に一律25%の関税をかけるとすでに宣言しており、関税でカナダ経済を疲弊させ、個人的に恨みのあるトルドーを“いじめ”て、首相の座から引きずり下ろそうとしているように見えなくもない。 トルドーは2024 年11月29日、トランプの南部フロリダ州にある私邸マーラ・ア・ラーゴを訪問した。彼は米大統領選挙後、G7のメンバーの中で、トランプに最初に会った首脳になった。トランプは、関税で圧力と脅しをかけ、トルドーの訪問を引き出し、支持者や米国民に「強いリーダー」の自分をみせつけた。